先日、アルバイト先の病院で人工股関節全置換術(THA)を施行しました。その病院では基本的には外来しかしていないので、手術室に入ることはほとんどありません。
しかし、外来フォローをしている患者さんで、手術を施行せざるを得ない方がときどき出てきます。地域柄、なかなか他院に振ることは難しいので、やむを得ず執刀することがあります。
普段勤務している病院以外で執刀する手術は、どれだけ手慣れた手術であっても、いつもどおりと言うわけにはいきません。予想外のことが発生しやすいのです。
私はかなり慎重派なので、たとえTHAと言えどもアウェーでの手術の際にはかなり入念に下準備をしていきます。それでも今回は3つも予想外のトラブル(?)が発生しました。
トラブル①
私は術前に透視下に体位の微調整を行っています。術前計画通りにカップを設置することが目的です。ナビゲーションを使用しなくてもかなり正確にカップを設置できるので重宝しています。
しかし、今回は手術台が壊れてしまいました・・・。電源を入れても全く動かないのです。どうも機械関係のトラブルに遭遇することが多いです。
30分ぐらいMEさんが格闘していましたが、うんともすんとも言いません。しかし、ふとした瞬間に動くようになりました。かなり不安定だったので、大急ぎで設定して事なきを得ました。
トラブル②
頭からすっぽり被る人工関節用のヘルメットを使用して手術を行いますが、開始から1時間ぐらいでバッテリーが切れました。今からセメントステムを入れるぞーというタイミングで・・・
経験した方は分かると思うのですが、ヘルメットを被っているときにバッテリーが切れると呼吸できなくなります。1分ぐらい経過するとこのまま死んでしまうのではないかと思うほどです(苦笑)。
騒ぐと酸素消費量が増えるので、バッテリーが交換されるまで ”忍” の字でした。それにしても何故1時間程度でバッテリーが切れるんだろう???
トラブル③
比較的若年男性だったのですが、骨質が異常に悪かったです。髄内洗浄すると、近位の海綿骨が無くなってしまいました・・・。このようなケースはときどきありますが、いずれも高齢女性です。
過大前捻対策でセメントステムを準備していたので事なきを得ました。しかし、ホームでの手術と同様にS-ROM-Aを選択していたら、結構アブなかったと思います。
上記のようにトラブル①②はほとんど予測不能です。②はバッテリーの寿命は大丈夫ですか? ということで回避できそうですが、手術室スタッフに喧嘩を売っていますね(笑)。
③はできるだけシンプルな手術を心掛けているので、THAに関しては少しでもアブナイと思ったらすぐにセメントを使用します。
このように、どんなに手慣れた手術であってもアウェーでの手術は気が抜けません。できるだけ入念に下準備して、退路を確保しながら手術に臨むようにしましょう。
アウェー
先日、とある病院で人工股関節全置換術(THA)の執刀を行ってきました。
この病院では年間のTHA施行症例が0~1でほとんど実績がありません。
このため、スタッフもTHAの経験がほぼ皆無の方ばかりでした。この状況でTHAを施行するには、やはり事前の入念な下準備が必要です。
また、事前準備はもちろんのこと、術中もできるだけシンプルな手術を心掛けています。凝ったことは行わず、アプローチは後外側で後方の軟部組織は梨状筋温存のみに止めます。
ステムはヨーロピアンタイプのwedge taperを選択して手堅く行います。とにかくいたるところに目を光らせる必要があるので、手術そのものはシンプル・イズ・ベストです。
あと、今回は使い慣れた3種類のレトラクター(前方・後方・上方用)を持参しました。THAにおいては、レトラクターの選択が手術の難易度にかなりの影響を与えます。
これは自分の手技が頻用しているレトラクターに最適化していることが原因だと思います。アウェーの地で使い慣れたレトラクターが出てくると、少し懐かしい気持ちになります(笑)。
アウェーで手術をすることは、招く側・招かれる側とも得るものが大きいと思います。ただし、ホームで当然のこともアウェーでは当然でないことが多いので、入念な準備が必要だと思います。
★★★ 管理人 お勧めの医学書 ★★★
初学者がTHAの治療体系を俯瞰するにあたり、最もお勧めの書籍です
人工股関節全置換術
昨日の午後の手術は、人工股関節全置換術(THA)でした。出張先で行う初めての手術だったので、普段以上に気を使いました。アウェーでの戦いはやはり緊張しますね(笑)。
THAにおいて手術台の種類は、カップの設置角度にかなり影響を与えます。最近はイメージ下に骨盤の傾きをニュートラルにするので、病院が変わっても設置角度のばらつきは小さくなりました。
昔はその病院での執刀記憶だけで、この病院のベットは柔らかいからカップの傾きは少なめに・・・、等の経験則に頼ったカップ設置でした。今にして思えばかなりファジーです。
手術台の特性によるカップ設置角度のばらつきは、この方法で回避できます。あと問題になるのは使い慣れた器具が無いことによる手術時間の延長です。これは事前に分からないことが多いです。
昨日の例では非常に深い術野の方だったので、大きなヘルニア鉗子がボトルネックになる器具でした。通常の鑷子では寛骨臼底に届かなかったのです。
2回目以降はそれほど苦労しないと思いますが、初回手術ではかなり念入りに下準備をすることをお勧めします。また、どれだけ下準備をしてもやり難さを感じることは覚悟しておくべきでしょう。
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人工股関節全置換術
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