先日、下肢の骨折の手術がありました。
受傷前から近医でβブロッカー( 交感神経β受容体遮断薬 )を処方されていました。


βブロッカーは、交感神経のアドレナリン受容体のうちβ受容体のみに遮断作用を示すので、降圧作用、狭心症状や不整脈の予防、心不全患者の心機能改善を期待して用いられます。


周術期で問題になるのは、当日朝に以前から服用しているβブロッカーの服用を中止するか否かです。麻酔科医師によると、10年ほど前までは服用中止が当たり前だったそうです。


しかし、長期投与されていたβブロッカーの服用を突然中止すると、「離脱症候群」が発生する危険性があるため、最近では手術当日にも服用してもらうことが多いそうです。


β遮断薬の長期投与によってβ受容体の数が増加して、長期投与前に比べて上向きの調節(アップレギュレーション)が発生します。


このため、βブロッカーの服用を急に中止すると、著明な血圧の上昇や虚血症状、不整脈が増悪することがあります。この状態はβブロッカーの離脱症候群と言われていて大変危険です。


周術期にβブロッカーの離脱症候群を併発することを防ぐために、今では手術当日もβブロッカーの服用継続が推奨されています。


高齢者の骨折では前医から処方されている薬がそろわないケースが多いと思いますが、βブロッカーが投与されている際には、慎重な対応が必要だと思います。





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