先日、拝読した書籍が非常に興味深かったのでご紹介します。
堀古英司氏の リスクを取らないリスク です。
この書籍のタイトルをぱっと見ただけでは、「安住に甘んじずチャレンジして成功を勝ち取れ」 的な単なる自己啓発本ですが、実際は非常に実務的な内容の良書です。
同書の中では、経済成長 = 格差拡大 と喝破しています。つまり経済成長と格差拡大はコインの裏表の関係であり、格差が拡大しない経済成長の実現は現実的に非常に難しいです。
経済成長するには革新(イノベーション)が必要ですが、革新によって得られた利益の多くは、それらの革新を起こした起業家や資本家が得るのであり、労働者が得るものでは無いからです。
そして、現在の日本の状況は巨額の財政赤字です。50兆円の税収しか無いのに90兆円の歳出となっています。これは本来受けることのできる2倍のサービスを受けている状態です。
私たちは、国防・警察・教育・医療・福祉・社会インフラを通じて、発展途上国と比べて高いレベルのサービスを享受しています。身の丈を超えたサービスを享受できるのは何故でしょうか?
理論的には、将来的に日本が経済成長することで現在の借金を返済できると投資家が考えて、資金を拠出(日本国債を購入)しているからです。このため経済成長は必須です。
もし、日本が経済成長しないのなら、借金返済意志の無い者にお金を貸すのと同義です。このため、現在の生活水準を維持するためには経済成長せざるを得ません。
「無理をしないで低成長で良いのではないか」「2位じゃだめなんでしょうか?」という論調がありますが、この考え方は発展途上国並みのサービスに堕ちることを良しとすることと同義です。
このように日本には経済成長が必須ですが、経済成長と格差拡大はコインの裏表の関係なので格差拡大は既定路線です。格差が拡大した時に、どちら側に立つかは今の心掛けしだいです。
ここまで堀古氏の考え方を要約してきましたが、私は非常にまじめな考え方だと感じました。確かに正攻法での解決法は経済成長です。しかし、人は弱いものです。
格差拡大を容認して経済成長を志すことは、政治的にはリスクもあります。私は巨額の財政赤字を解決するのはインフレによる借金踏み倒しだと考えています。
2015年5月17日の大阪都構想をめぐる住民投票において、大阪市の方は安楽死の道を選びました。「自分が生きているうちは安定を」と考える高齢者のシルバーデモクラシーの弊害です。
大阪市は日本の縮図だと思います。残念ながら、能動的に巨額の財政赤字を解決する確率は高くなさそうです。そして、インフレによる借金踏み倒しは、ほとんどの人を貧困化します。
医師は医療財政に養われている「準公務員」であるため、貧困化の例外ではありません。経済成長による格差拡大でも、インフレによる借金踏み倒しでも、座していれば死を待つばかりです。
堀古氏がおっしゃられるように、「何もしないことが正解」の時代は終わりました。これからはリスクを取らないことがリスクとなります。少し怖くもあり、面白い時代の到来ですね。
第88回日本整形外科学会学術総会期間中の2015年5月23日に開催した、本ブログ管理人による 「医師のための資産形成セミナー」 の動画、および講演で使用したスライドです。
本セミナーは経済的自由獲得を目指す医師向けに開催しました。 資産形成マニュアル は、医師に最適化した資産形成手法だと自負していますが、文書だけでは伝わらないことも多いです。
講義内では、資産形成マニュアルにおいて文面だけでは伝えきれなかった資産形成のコツや、寝ていても定期収入をもたらしてくれる 「資産の自動運転化」 を中心に説明しています。