先日、意思疎通の難しい高齢者が、膝関節の腫脹で受診されました。
SAH後の後遺障害のために、自分で歩行することも不可能です。
両下肢は、股関節・膝関節ともに90度で屈曲拘縮しています。右膝関節が異常に腫脹しているので、単純X線像を施行したところ、大腿骨顆上骨折を併発していました。
転位はかなり大きいのですが、骨質がかなり悪いです。いわゆる「オムツ骨折」です。オムツ骨折では、こちらでご紹介したように苦い経験があります。
う~ん、どうしよう。しばらく患者さんを目の前にして考え込みましたが、どうしても患者さんを手術できるイメージが湧かなかったので、今回は保存治療を選択することにしました。
保存治療といっても、高度に拘縮した股関節・膝関節なので、できることは限られています。膝関節90度屈曲位のまま、背側から下肢シーネを施行しただけです。
90度の拘縮膝にシーネ固定する臨床的意味合いには、あまり自信を持てません。しかし、施設では多数の職員さんが働いているので、オムツ骨折の存在を周知するために施行しました。
シーネ固定することによって周囲が注意して、慎重に体位変換を施行してくれることを期待したのです。医療技術が発達すると、このように治療の難しい患者さんが増えていきます。
昔であれば、ここまで長生きできなかったはずの方が増加するのです。医療の発展は素晴らしいことですが、いたちごっこのような気がするのは私だけでしょうか???
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