人工股関節全置換術(THA)では、軟部組織温存とインプラント設置の容易さはトレードオフの関係です。
軟部組織を温存しようとすると、必然的に術中操作を含めたインプラント設置が難しくなります。自分の技量範囲内で可能なかぎり軟部組織を温存するという戦略がベストでしょう。
さて、軟部組織を温存し過ぎると、寛骨臼内にカップを挿入することさえ難しくなります。しかし、せっかく軟部組織を温存してきたのに、この段階で切離するのは虚しい・・・
このような場合にはカップホルダーからカップを外して、カップのみを寛骨臼内に挿入してみることをお勧めします。
これでも厳しいことが多いですが、カップを自由自在に動かせるので、通常は何とか寛骨臼内に押し込むことが可能です。
そして首尾よく寛骨臼内にカップを挿入できれば、下記手法によってカップにカップホルダーを装着します。
- カップを用手的に寛骨臼内に挿入不能であれば、ボーン・インパクター等で叩打する
- エレバトリウムを内方からカップのスクリューホールに入れて、カップ縁を支点にして梃子の原理でカップをカップホルダーを装着しやすい角度に調整する
少々手間ですが、こうすることで軟部組織を温存した状態でカップを設置することが可能となります。もちろん、難しければ軟部組織を切離する勇気も大事だと思います。