今日の午前は外来でした。
30歳台の方が転倒して手関節の痛みを主訴にして初診されました。
単純X線像では橈骨遠位端骨折でしたが骨質が良好で転位も少なかったため、軽く徒手整復してから前腕から手部までのギプスシーネ固定を施行しました。
橈骨遠位端骨折に対する外固定に際しては、MP関節をフリーにすることが重要だと言われています。確かにギプス固定に際しては、私もMP関節をフリーにすることは重要だと思います。
しかし、橈骨遠位端骨折に対してギプスシーネ固定を施行する場合、MP関節をフリーにするとギプス固定と違って背側に固定性が無いので、骨折部の安定性を保てない可能性があります。
単純X線像でも、MP関節を完全にフリーにするとかなり固定範囲が短くなってしまうことが確認できます。このため私はギプスシーネ固定に限っては、MP関節まで固定範囲を広げています。
正確には基節骨基部ぐらいまでギプスシーネ固定するのですが、幸いMP関節拘縮で困ったことはありません。ギプスシーネ固定に関してはMP関節まで固定しても良いのではないでしょうか?
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ギプスシーネ固定
肘関節内側側副靭帯損傷と肘関節脱臼 その1 のつづきです
肘関節脱臼は、O'Driscollの報告以来、肘関節の後外側回旋不安定性と関連して認識されるようになりました。O'Driscollの説では、①外側側副靭帯が断裂 ②前方および後方関節包断裂 ③内側側副靭帯が断裂 ④肘関節脱臼 という受傷機転です。
したがって、O'Driscollの説では脱臼している場合には内側側副靭帯損傷は必発です。ただし実際の臨床で、肘関節脱臼が内側側副靭帯の破綻なくして起こりうるかは明らかではありません。
肘関節脱臼では靭帯成分のみの損傷なのか、骨性損傷も併発しているのかで治療方法が異なります。橈骨頚部(頭)骨折や鈎状突起骨折を併発している場合には手術適応ですが、靭帯損傷のみであれば保存治療の対象となります。
保存治療のポイントは、関節可動域の確保と関節安定性の獲得という相反する目的をいかにして達成するかです。この相反する2つの目的を達成するために、ギプスシーネ固定を1週程度施行して、その後は三角巾のみで可動域訓練を開始することが多いようです。
関節安定性を獲得するためには3-4週程度の外固定は必要ですが、成人で長期間固定すると関節拘縮が必発です。臨床的には関節の安定性を多少犠牲にしてでも、関節可動域を確保する方が肘関節機能を温存する上では重要です。拘縮が必発なので、不安定性が日常生活で顕在化しにくいのです。
昨日は当直でした。平均台から転落して手をついた中学生が肘の痛みで来院しました。肘関節内側側副靭帯損傷(MCL損傷)だったのですが、体操選手なので本当に保存治療でよいのかを判断するために、MCL損傷のおさらいをしました。
肘関節脱臼や肘関節内側側副靭帯損傷(MCL損傷)は日常診療でよくみかける外傷です。
肘関節の解剖ですが内側側副靭帯は、前斜走靭帯(anterior oblique ligament; AOL)、後斜走靭帯(posterior oblique ligament; POL)、横走靭帯(transverse ligament; TL)、の三つの部分に分けられます。
AOL単独損傷である場合がほとんどで、治療は2週間のギプスシーネ固定の後、可動域訓練を開始します。一方、AOLに加えてPOLやTLも損傷している場合には肘関節の不安定性が増悪するので、靭帯修復術の適応となります。
尚、MCL損傷には肘関節脱臼の自然整復例が含まれていることがあります。この場合には、肘関節脱臼の治療に準じて治療を進める必要があります。
靭帯損傷の程度の鑑別は、下図のように外反ストレス撮影もしくはGravity testで行います。
Monthly Book Orthopaedics Vol.8 No.9 P32
広島大学の村上恒二先生の著書から引用
肘関節内側側副靭帯損傷と肘関節脱臼 その2 につづく
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