今日の午後の手術は、大腿骨顆上骨折でした。大腿骨顆上骨折は、大腿骨頚部骨折と比べて解剖学的に良好な固定性を期待できないため難易度が高い骨折だと思います。
シンセスのロッキングプレートが登場するまでは、逆行性髄内釘ぐらいしか無かったため、あまり良好な治療成績を見込めませんでした。ロッキングプレートは革命的な内固定材料なのです。
現時点ではロッキングプレートが大腿骨顆上骨折の第一選択の内固定材料だと思います。実際の手術手技ですが、牽引手術台を使用する方法としない方法に分けることができます。
私は、手技が容易なので牽引手術台を使用することが多いです。さて、麻酔を導入した段階で牽引手術台に載せますが、この際にあらかじめ透視下にプレートの選択をします。
LCP DFは5穴から13穴までありますが、たいてい7穴前後のプレートを選択することになります。まず、プレートの入った箱ごと透視します。そして最適な長さのプレートを選択するのです。
更に、プレートを大腿骨外側に置いて正面から透視しながら、関節面・骨折部・プレート中枢端を皮膚上にマーキングします。側面像でも透視しておくと皮切の部位を間違えません。
術中の手技のポイントはこちらにまとめているので、ご参考にしてください。転位が高度な大腿骨顆部の粉砕骨折以外は、基本的に牽引手術台をお勧めします。
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AO法骨折治療
シンセス
今日の午前は出張先での外来でした。
認知症で施設入所中の70歳台後半の方が家族に連れられて初診されました。
1週間ほど前から右膝外側の痛みを訴えるとのことでした。診察すると脛骨外側のL型プレート前方のカドの部分が今にも皮膚を突き破りそうな状況でした。
ちょっとした外力で皮膚からプレートが露出しそうなので、抜釘せざるえない状況と判断しました。認知症のためご本人とは意思の疎通もままならないのですが、家族が抜釘を強く希望されるので仕方ありません。
今回の状況に至った主な原因は、シンセスのL型プレートが大き過ぎて日本人の体格に合っていないことです。プレートの形状を改善せずに何十年も販売しつづけているシンセスもどうかと思いますが、他に選択枝がない状況では何とか対応する必要があります。
術中にプレートが大きすぎて脛骨前方に突出することが判明した時点で、プレートをもう少し後方に設置できるようにプレートが当たる腓骨頭の前方部分をdiamond burrで掘削します。
このように腓骨頭の前方部分にプレートが収まる溝を作成することで、プレート前方の角が突出する度合いが少なくなります。L型プレートの前方の角部分を無理やり曲げる人もいますが、ロッキングスクリューを使用する場合は避けた方が無難でしょう。
シンセスにはアジア人の骨形状に合わせたプレートの形状改善を望むとともに、他のメーカーの参入を期待します。
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先日、海外で骨折の手術を受けた方の抜釘を行いました。単純X線像で、使用されている内固定材料はシンセスのロッキングプレートであることは予想されました。
しかし、念のためその病院にe-mailで問合せをして型番を確認して手術に望みました。実は返信にあったスクリューの型番が200番台だったので、情報の信憑性を少し疑っていました。
その理由は、シンセスの200番台のスクリューはステンレス製だからです。チタン製であれば400番台のはずなのですが、少なくとも日本国内で販売されているシンセスのロッキングスクリューにステンレス製は無いです。
メーカーの戦略上、内固定材料は償還価格の高いチタン製に移行しており、ステンレス製のロッキングスクリューやプレートは存在しないとシンセスから説明を受けていました。しかし、抜釘してみると使用されていたプレートやロッキングスクリューはなんとステンレス製だったのです!
おそらく材質の違いが原因だと思いますがロッキングスクリューは緩んでおり、プレートから完全に浮いている状態でした。幸い骨癒合していましたが、これではロッキングスクリューの意味がありません。
少なくともロッキングプレートやスクリューに関してはステンレス製は危険だという認識を抱きました。チタンの”からみつく”ような材質の特徴が、ロッキングシステムの強固な固定力の源泉だったことに改めて気付かされました。
シンセスに確認すると海外で安価な内固定材料を要求される国ではステンレス製を納品しているとのことでした。そして、日本国内においてチタン製のみ使用されている状況は単にシンセスの利益追求の結果です。
私は、通常のプレートはステンレス製の方が性能が良いと考えており、利益のために性能の良いステンレス製の内固定材料を犠牲にするシンセスの姿勢を苦々しく思っていました。しかし、ロッキングシステムに関してはシンセスの姿勢が患者さんに良い影響を与えているようです。
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昨日の午後の手術は、大腿骨顆部粉砕骨折でした。
顆部骨片が内外顆骨片および外顆が前後に骨折している粉砕骨折でした。
大腿骨顆上骨折はロッキングプレートの登場で治療成績が向上しています。ロッキングプレート(LCP-DF)はシンセスにしては珍しく使用し易い内固定材料だと思います。
※ シンセスはイノベーションを引き起こしますが、商品改良の点で難アリだと思います
顆部骨折ではありますが、リガメントタキシス(ligamentotaxis)を期待して、牽引手術台を用いて手術を行いました。牽引手術台を使用する場合は、顆部が過伸展位になりがちです。
まず側面像で大腿骨骨幹部のやや後方にプレートが位置するようにし、顆部にロッキングスクリューを7本挿入します。次に、ローマン等でプレートの中枢側を大腿骨の長軸に合わすことで過伸展を矯正することが可能です。
牽引手術台を用いると手術が楽なので、私は基本的には牽引手術台を使用します。しかし牽引手術台に載せてみて整復が充分に得られない症例では、躊躇せずに通常の手術台に戻す必要があります。
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今日の午前の手術は、大腿骨遠位1/3の螺旋骨折に対する骨折観血的手術でした。
従来は、髄内釘を選択することが多かったですが、本日はロッキングプレートを使用しました。
現状では、大腿骨顆上骨折に関してはロッキングプレートがベストの内固定材料だと思いますが、大腿骨遠位骨折に関してはどうでしょうか?
牽引手術台を使用する場合は、遠位骨片が過伸展位になりがちです。まず側面像で大腿骨骨幹部(中枢側)のやや後方にプレートが位置するようにし、顆部にロッキングスクリューを7本挿入します。次に、ローマン等でプレートの中枢側を大腿骨の長軸に合わすことで過伸展を矯正することが可能です。
しかし大腿骨顆上骨折と異なり、中枢側での整復操作は容易ではありません。理論的には中枢側とプレートのアライメントを揃えることで骨折部が整復されますが、大腿の筋肉に邪魔をされて整復は容易ではありませんでした。
最終的にはなんとかアライメントは整ってそれなりの形で手術を終了しましたが、侵襲の程度や整復の容易さを考えると逆行性髄内釘の方がよりベターな選択枝だと思いました。
※ ここでいう逆行性髄内釘とは、supracondylar nailではありません。
supracondylar nailでは長さが足りずに対応できないことが多いです。
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