先日、群馬大学整形外科学教室の前教授である高岸憲二先生の講演を拝聴しました。講演内容は、肩腱板断裂についての疫学調査でした。
群馬大学のグループは、群馬県利根郡片品村で行われた特定検診において運動器検診を行い、腱板断裂を含めた整形外科領域の各種疾患の有病率を調査しました。
腱板断裂の調査には超音波検査を用いたそうで、結果は下記のごとくです。
- 50歳以上の住民の26.6%に腱板断裂を認めた
- 高齢になるとともに有病率が高くなる
- 背景因子は①外傷の既往 ②利き腕側 ③年齢
上記の結果の中で無症候性の腱板断裂に関しては下記のごとくでした。
- 症候性断裂の割合は34.6%、無症候性断裂は65.4%
- 無症候性断裂の割合は、年代に関わらず腱板断裂例の約2/3であった
う~ん、 これはかなり興味深い結果です。これほど無症候性腱板断裂の割合が多いとは思いませんでした。人口比で26.6%×65.4%=17.4%の方は、無症候性腱板断裂ということになります。
このことから、肩関節周囲炎と言われている患者さんの中にも、かなりの割合で腱板断裂が紛れ込んでいる可能性が示唆されます。
腱板再建術後の再断裂例でも、再断裂が大きくなければ術後成績は良いことが知られています。 何に対して、何を目的に手術を施行しているのか? 肩関節は奥が深いですね。。。