先日、90歳台後半の入院患者さんが胸部痛を訴えました。
ECGを施行したところ、入院時には無かった完全左脚ブロックを認めました。
循環器内科医に相談したところ、トロポニンTとラピチェックをチェックするように指示を受けました。この2つは虚血性心疾患を疑う際に施行される検査です。
ラピチェックは、ヒト心筋由来脂肪酸結合蛋白(Heart type Fatty Acid Binding Protein)を測定する検査です。脂肪酸結合蛋白には心筋型、肝臓型、小腸型があります。
心筋型(Heart-type:H-FABP)は主として心筋細胞脂質に局在し、骨格筋や他の組織における含量が少ないことから、心筋傷害の優れた指標になると考えられています。
心筋虚血に伴う心筋細胞傷害時に、H-FABPは1~2時間で血中へ逸脱することが知られています。発症3時間以内での心筋梗塞における感度と特異度は下記のごとくです。
トロポニンT: 感度 31.9% 特異度 96.3%
ラピチェック: 感度 91.5% 特異度 55.6%
このようにトロポニンTは感度が低いが特異度は高く、逆にラピチェックは感度は高いが特異度は低い検査です。このため両方を同時に行うことで虚血性心疾患の診断精度を高めます。
しかし、保険では両方の検査を同時に行うことが認められていません。このため、往診時等のどちらかの検査を選ばざるを得ない際には、感度の高いラピチェックを選ぶ場合が多いようです。
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