昨日の午後は、大腿骨頚部骨折に対する関節内骨折観血的手術でした。
私は、ハンソンピン(正確にはHOMS技研のSB FIX)を使用しています。
ハンソンピンは髄内釘やCHSと比べて刺入部位や角度を自由に設定できることがメリット(?)ですが、昨日の例ではこのメリットを生かし切れずに失敗しそうになりました。
患者さんはかなり小柄な方だったのですが、深く考えることなく通常通り、刺入角度を頚体角に合わせてリーミングしました。計測の結果、近位側のピンの長さが63mmでした。
60mmにするか65mmにするかを少し迷ったのですが、特に気にも留めずに「65mmを出してください」と言ったのですが、よくよく聞くと65mmが最も短いピンだったようです。
幸い、2本とも既製品での対応が可能でしたが、刺入角度が小さかったら60mmしか挿入できなかったかもしれません・・・。私の頭からピンの長さに下限があることが抜け落ちていたのです。
ハンソンピンの際には、小柄な方は頚体角よりもやや大きめの角度で刺入することが正解かもしれません。いずれにせよ、最短のピンの長さは頭の片隅に入れておくべきだと思いました。
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AO法骨折治療
ピットフォール
昨日の午後は、大腿骨転子部骨折に対して骨折観血的手術を施行しました。
今回は入院後2日目での手術で、やや遅めでした。
さて、いつものごとく大腿骨近位部骨折用のshort nailを使用しましたが、ちょっとしたピットフォールに陥りました。まずは下の画像をご覧ください。
一見、何の問題も無さそうですが、実は、lag screwの尾側が大腿骨外側皮質から約5mmほど出ています。ちなみにこの両股関節正面像では、そのことを確認することはできません。
lag screwをよく観察するとやや大腿骨頚部前捻角の分だけ回旋しています。つまりlag screwをやや斜めから見ていることになるので、このアングルからは至適な長さなのです。
しかし、実際にはlag screwの正面像で見ると、lag screwの尾側が大腿骨外側皮質から約5mmほど出ていたのです。最後の術中イメージの確認でこのことに気付きましたが時既に遅しです。
術中のイメージでは、この画像の角度でスリーブが大腿骨外側皮質に接しているように見えたので、実際の長さよりも約5mm長いscrewを選択してしまいました。
今回のピットフォールで、術中イメージの画像だけではなく実際にスリーブが大腿骨外側皮質骨に接触している感覚を得るまでスリーブを挿入するべきだということを学びました。
tensor fascia lata等が邪魔をしてスリーブを挿入しづらいことが多々ありますが、やはりlag screwの計測は一番大事なところなので、しっかり皮質骨に当たるまで挿入するべきですね・・・。
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昨日の午後は肘部管症候群に対する尺骨神経皮下前方移行術でした。
この方は上腕骨顆部骨折後のため、約30度の肘関節伸展制限がありました。
術中所見は、pseudo neuromaの形成は認めませんでしたが、肘部管で尺骨神経が全体的に萎縮していました。おそらく骨折後の瘢痕形成のため肘部管で尺骨神経が圧迫されたのでしょう。
尺骨神経皮下前方移行術では肘部管を中心に広範囲に尺骨神経を展開する必要があります。中途半端な展開では肘関節部で前方に移行した尺骨が”く”の字に曲がってしまうからです。
しかし、実は広範囲に尺骨神経を展開するだけでは不十分です。中枢側の筋間中隔の切離を忘れると、テント状に緊張した筋間中隔の上を尺骨神経が跨ぐことになり圧迫されるのです。
また、筋間中隔の少し奥には太い静脈が走行しています。何も考えずに筋間中隔をそのまま切離すると、この太い静脈を損傷してしまうので注意が必要です。
尺骨神経皮下前方移行術のピットフォールは、①筋間中隔の切離 ②筋間中隔に伴走する太い静脈の保護 だと思います。手術の際には頭の片隅に置いておくと良いのではと思います。
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今日の午前は、外来でした。
1週間前に椅子から転落して上腕骨外顆骨折を受傷した3歳児の保存治療を施行しています。
整形外科医であれば正確な単純X線正面像をみれば、一目瞭然で骨折の有無が分かりますが他科や整形外科としての経験が浅い医師では見逃しがちな骨折だと思います。
痛がって肘関節を完全伸展できないケースが多く、転位が1mm程度の場合には母床と重なって単純X線正面像で骨折部が分からないこともあります。
ちなみに転位1mmは保存治療可能な限界の転位です。現在治療中の児も受傷後1週目の今日の単純X線正面像はやや肘関節屈曲位で撮影されたため骨折が分かりませんでした。
経験を積んだ整形外科医であれば初診時の局所所見をみれば外顆骨折の見当がつきますが、完全伸展できていない単純X線正面像には注意が必要です。
上腕骨外顆骨折を疑うがどうしても肘が伸展できない場合には、前腕をやや浮かせた状態で上腕に合わせて正面像を撮影すればよいと思います。
治療は2mm以上の転位で手術適応です。1mmの転位の場合には3-5日に一度は単純X線を施行して転位の増悪がないことを確認する必要があります。
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