先日、人工膝関節全置換術(TKA)の手術がありました。
今回は同僚の手術でしたが、現在の病院では初めての執刀でした。
大学同門の医師ではあるものの、施設が違うと流儀が異なることが多いです。今回はポジショナーが興味深かったのでご報告します。
私は骨切面に負荷が掛かるのが嫌なので三角枕を使用していますが、一般的にはポジショナーとしてアルバラードを使用する医師が多いと思います。
一方、今回は側臥位支持器を患側殿部に設置して下肢が外転することを防ぎながら、膝関節を屈曲80度にした際の踵部に砂嚢を置くことで、下肢の自重だけで膝関節を固定できます。
これは、Mayo clinicで行われている手法だそうです。砂嚢を置く位置にやや工夫が要りますが、安価で初期投資がほぼ不要のため、優れた方法だと思いました。
このように大学同門の医師であっても、働いてきた施設が異なると勉強になることが多々あります。やはり、医学においても多様性が重要なのでしょうね。
ポジショナー
今日の午前の手術は、人工股関節全置換術(THA)でした。
今週は、この後にもまだ3例のTHAが控えており結構大変そうです。
基幹病院や人工関節センターなどTHAを多数施行している施設では、universal lateral positionerを使用しているところが多いと思います。
このポジショナーは骨盤の強固な固定を得ることができるため、正確なカップ設置を行う上でとても重宝しています。固定は3点固定で、両上前腸骨棘と仙椎を背腹から圧迫します。
universal lateral positionerの唯一の欠点は、可変式のアームになってから患側上前腸骨棘の位置決めが難しくなったことです。上前腸骨棘からズレるとポジショナーの固定力が落ちるのです。
上前腸骨”棘”という言葉から先が尖がっているイメージを抱きがちですが、実際は3cmほどの幅でなだらかに隆起しています。このセンターにアームの金属部分を設置することを目標とします。
至適位置に設置するために、母指と示指で3cmほどの上前腸骨棘の両端を触知しながら、2本の指の真ん中にアームの金属部分が来るように微調整します。
こうすることで患側上前腸骨棘の位置決めも一発でバッチリ決まるので、術中のカップ設置の際にも安心してインプランテーションすることが可能となります。
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股関節学
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