週刊ダイヤモンド 2018.3.17号の「数字は語るで、法政大学の小黒教授が団塊の世代が75歳となる2025年問題について、興味深い提言をされていました。






医療費は、年金と同様に人口の高齢化による増加圧力に歯止めがかかっていません。そして、年金は現役世代の負担で高齢世代の給付を支える賦課方式となっています。


年金制度を維持するため、2004年に「マクロ経済スライド」が導入されました。その時の賃金や物価の改定率を調整して、緩やかに年金の給付水準を調整する仕組みです。


このマクロ経済スライドによって年金の給付水準を調整することで年金の持続可能性を高めることが目的です。


一方、医療は全員負担ですが、コストの大半は老齢期に集中しているため、実質的には年金と同様に現役世代がコストを負担しています。


この厳しい状況に対応する解決策のひとつとして、法政大学の小黒教授は下記のような提言をされています。





今後、医療や介護にもマクロ経済スライドのような自動調整機能の導入が必要になるだろう。その対処として、例えば、医療では、75歳以上の高齢者が加入する後期高齢者医療制度において、その診療報酬に自動調整メカニズムを導入し、現役世代の人口減少や平均余命の延び等を勘案した調整率を定めて、その分だけ、全体の総額の伸びを抑制してはどうか。


具体的に言えば、75歳以上の診療報酬において、前年度Z点と定めている項目を、今年度はZ ×  (1-調整率)点に改定するということだ。75歳以上の個人が支払う医療費の自己負担が増えるということは決してない。

診療報酬の改定には、医療機関などからの反発もあるかもしれない。それでも、2025年問題を控え、財政の持続可能性の向上を図る観点から、医療や介護制度でも抜本的な改革が求められることになるのは必至だ。マクロ経済スライド的な仕組みの導入もその一案にはなろう。





75歳以上の個人が支払う医療費の自己負担が増えることはないということは、医療費の増大とリンクして診療報酬単価がどんどん下がっていくことを意味します。


医療機関としては塗炭の苦しみですが、個人負担を増やさないため、政治的には充分に合理的です。マクロ経済スライド的な仕組みの導入は、大きな流れとしては不可避と考えます。


こうなると、医療機関が生き残るためには質を落として(コストを下げて)、診療報酬単価の漸減に対応するしかありません。


非常に暗い未来予想図ですが、これ以外に道は無いところが事態の深刻さを物語っています。大きな流れは変わらないので、生き残るためには個人的な対応が必須となるでしょう。





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