先日の外来での出来事です。
私は、MRIの当日説明は見逃しの温床だと思っているので可能なかぎり避けています。
患者さんには「放射線科とのダブルチェックによって見逃しの確率を下げることができるので、撮像当日はMRIの結果を説明せず、後日に結果説明させてもらいます」と説明しています。
ほとんどの患者さんは理解してくれるのですが、ときどきどうしても同じ日に説明して欲しいという方が居ます。骨折などでやむを得ない場合はある程度仕方無いと思います。
しかし、その日の方は80歳台の方で時間は有り余るほど有るのですが、どういうわけか検査の日時を勝手に再診予約の当日の朝一番に変更して、MRIの当日説明を求めてきました。
マイルドな腰部脊柱管狭窄症なので緊急性はありません。患者さんの強引さに辟易した私は、放射線科医師の読影ができていないので、MRIの結果説明はできないことを再度説明しました。
患者さんはやや不満そうでしたが、「軽い脊柱管狭窄症なので、このまま様子を見ましょう」と言って帰した場合、私がMRIの見落をしたとしていたとしてもチェック機構が働きません。
私にとって後腹膜腔はブラックボックスなので、脊椎だけ診ればよいというわけではありません。もちろん、患者さんの読影結果を後日に確認すればよいのでは? という意見もあります。
しかし、優先度の低い症例で特殊対応を始めると収集がつかなくなります。私は重症度の高い方以外は、仕組み化してルーチンワークにしておく方が医療ミスが減ると考えています。
このあたりは、さまざまな意見があると思いますが、患者さんの安全を第一に考えるのなら、多少診察回数が増えてもダブルチェック機能を利かした方がより望ましいと考えます。
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ルーチンワーク
昨日は新患外来終了後に、THA術前の2名分の自己血採取&手術説明を行いました。
その後、朝に転倒して搬送された89歳の大腿骨転子部骨折の方の手術を行いました。
不安定性が強くて大腿骨近位は大腿骨頭・大転子・小転子骨片の4つの骨片に粉砕していました。一瞬ひるみましたが、やらざるを得ないのでいつものごとく当日手術を施行しました。
ネイルを大腿骨に挿入するまでは問題無かったのですが、大腿骨頚部と転子部の間の骨膜が完全に破綻しているようで、ラグスクリューのガイドワイヤーが頚部前方に抜けてしまいます。
仕方無いので、ドリルを思いっきりハンドアップして後方に転位している大腿骨頚部にガイドワイヤーの先を誘導してから、今度はドリルをハンドダウンしてなんとか骨頭に刺入しました。
股関節の拘縮が強くて健側下肢がイメージの邪魔をするため、骨折部の透視をすることさえも結構苦労しましたが、何とかそれなりの固定性を得ることができました。
家族に手術結果の説明して、医局に戻ってきたのは16時50分でした。朝からかなりの業務をこなしましたが、何とか定時までに一応の業務を終了することができました。
大学や日赤などの大規模な中核病院ではなかなかできない芸当ですが、小さな市中病院だからこそスタッフの協力も得られて、かなり効率良く業務を遂行できます。
私は生来がナマケモノなので、新規事業の立ち上げや投資計画を練るなどの頭脳を酷使する作業は、ついつい後回しにしてしまいます。
そして、このような手馴れた業務(=ルーチンワーク)は、あまり頭脳労働を伴わないので、実は私にとって絶好のストレス解消手段になっています(笑)。
これだけの量の業務を8時間の勤務時間内に全て終了すると、非常に精神的な充実感があります。このため、気持ち良く新しい1週間を迎えることができそうです。
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