整形外科の病院勤務医をしていると、認知症の患者さんと向き合いざるを得ません。先日も非常に高度の認知症の方が大腿骨頚部骨折を受傷されて入院しました。


さすがに手術前はおとなしかったのですが、術後は本性を発揮して昼夜を問わず暴言・暴力を振るうようになりました。病棟スタッフが何人も怪我を負ったので主治医としても対応せざるを得ません。


このような高度の認知症の方の薬物治療は精神科医や心療内科医の仕事です。しかし一般的には、常勤の精神科医や心療内科医が居ない病院の方が多いと思います。


このため整形外科医といえども、ある程度の緊急対応を知っておく必要があります。対応方法について精神科医師にお伺いしたところ、下記のごとくの処方例を教えていただきました。


認知症の対応


・ 基本はリスパダール投与
  1回1mg×2回/日から開始する。4mgぐらいまでは普通に投与可です

・ つぎがセレネース
  0.75~2.25mgを眠前投与から始めます

・ その次がヒルナミン投与
  25mgぐらいまでの眠前投与なら大丈夫でしょう



軽いせん妄も上記に準じますが、鎮静を避けたい場合は下記のごとくです。


せん妄の対応


・ レスリン(100mgまで可)などで夜間の睡眠を確保します

・ 高齢者のせん妄患者さんに、マイナートランキライザー(抗不安薬)は厳禁です

・ やはり少量のリスパダールは間違いが少なく、0.5-1mgの眠前投与が適当です

・ 抗コリン作用のある薬はせん妄の原因となりますので注意が必要です



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