先日、海外で骨折の手術を受けた方の抜釘を行いました。単純X線像で、使用されている内固定材料はシンセスのロッキングプレートであることは予想されました。


しかし、念のためその病院にe-mailで問合せをして型番を確認して手術に望みました。実は返信にあったスクリューの型番が200番台だったので、情報の信憑性を少し疑っていました。


その理由は、シンセスの200番台のスクリューはステンレス製だからです。チタン製であれば400番台のはずなのですが、少なくとも日本国内で販売されているシンセスのロッキングスクリューにステンレス製は無いです。


メーカーの戦略上、内固定材料は償還価格の高いチタン製に移行しており、ステンレス製のロッキングスクリューやプレートは存在しないとシンセスから説明を受けていました。しかし、抜釘してみると使用されていたプレートやロッキングスクリューはなんとステンレス製だったのです!


おそらく材質の違いが原因だと思いますがロッキングスクリューは緩んでおり、プレートから完全に浮いている状態でした。幸い骨癒合していましたが、これではロッキングスクリューの意味がありません。


少なくともロッキングプレートやスクリューに関してはステンレス製は危険だという認識を抱きました。チタンの”からみつく”ような材質の特徴が、ロッキングシステムの強固な固定力の源泉だったことに改めて気付かされました。


シンセスに確認すると海外で安価な内固定材料を要求される国ではステンレス製を納品しているとのことでした。そして、日本国内においてチタン製のみ使用されている状況は単にシンセスの利益追求の結果です。


私は、通常のプレートはステンレス製の方が性能が良いと考えており、利益のために性能の良いステンレス製の内固定材料を犠牲にするシンセスの姿勢を苦々しく思っていました。しかし、ロッキングシステムに関してはシンセスの姿勢が患者さんに良い影響を与えているようです。




       ★★★  管理人 お勧めの医学書  ★★★

       
       総論   (診察・診断、治療全般、骨折・外傷、周術期管理)
 

       各論   (手の外科、肩関節、脊椎、股関節、膝関節、足の外科、腫瘍)

       その他 (関節リウマチ、痛風・高尿酸血症、骨粗鬆症、専門医試験)