先日、高齢者の上腕骨近位端骨折(4 part骨折)に対して、右肩関節人工骨頭置換術(HHR)を施行しました。上腕骨関節面が翻転していたので、骨接合術の適応は無いと判断しました。
肩関節の人工関節を施行する機会は、股関節や膝関節と比較して少ないと思います。そこで、以前にも記事にしましたが、気付いた点をまとめてみました。
まず、delto-pectoral approachの教科書的な皮膚切開は鳥口突起上ですが、私は外側に排除する軟部組織を減らすため鳥口突起によりも2横指外側に置くようにしています。
骨折では血腫や瘢痕組織のために肩関節のオリエンテーションが難しいです。まずは骨幹側の骨折部を目指して展開します。ボーンソーを用いて骨折部をできるだけ近位で横切します。
この骨切りによって、肩関節内部を展開する「窓」が開きます。後は、大結節骨片と小結節骨片周囲を剥離して内外側に排除して、中央で翻転している関節面骨片を摘出します。
ここまでくると手術の山は越えたようなものです。 肩関節を伸展・外旋してリーミングおよびラスピングを施行してトライアルを行います。次にセメントなのですが、ここが少し曲者です。
一般的にはステム周囲にセメントを塗布してインプランテーションしますが、セメンティングが不充分なことが多いです。少しもったいないですが、セメントガンを用いる方が確実だと思います。
次にトライアルですが、股関節のようにはっきりとした脱臼肢位は分かりにくいです。指を入れても関節を触知しても、脱臼しているのかどうか分からないのです。
脱臼していないと信じるしかないですね(笑)。 一般的には肩関節の安定度はステムの後捻角に依存します。30度の後捻角がついていればまず安心してよいと思います。
肩関節が内旋拘縮している例が多いので、前方関節包の閉創が難しいことが多いです。術後の可動域(特に外旋)は、前方関節包の緊張を見て判断すればよいと思います
★★★ 管理人 お勧めの医学書 ★★★
整形外科を志すなら、キャンベル(Campbell's Operative Orthopaedics)は必須でしょう。ペーパー版以外にも、DVDやe-ditionもあって便利です。更にKindle版は約30% OFFで購入可能です。このような辞書的な医学書は、電子書籍と相性が良いと思います。
Campbell's Operative Orthopaedics: 4-Volume Set with DVD