先日、下腿コンパートメント症候群後の足趾拘縮の方が、セカンドオピニオン目的で受診されました。下腿コンパートメント症候群を放置すると、筋区画内の筋壊死や神経障害を起こします。


そして下腿であっても、前腕のフォルクマン(Volkmann)拘縮で知られる 不可逆性の阻血性拘縮を引き起こします。急性期には、筋区画(コンパートメント)内で下記の病態が進行します。

  1.  循環障害による筋肉の阻血性壊死
  2.  筋間を走行する神経の阻血圧迫麻痺 


①の筋肉の壊死ですが、深層のものほど高度で浅層は軽度なことが多いです。このため、下腿では下図のように深層にあるdeep posterior compartmentが高度に障害されます。



下腿コンパートメント



今回の方は、足趾の拘縮が主訴でした。具体的には足関節を背屈すると足趾が屈曲し、足関節を底屈すると足趾が伸展します。


deep posterior compartment内には長母趾屈筋・長足趾屈筋が存在するので、今回のような足趾の屈曲拘縮を併発します。


つまり、長母趾屈筋や長足趾屈筋が阻血性壊死しているため、筋肉としての機能が廃絶しているのです。このような症例では腱切離術で対応することが多いです。


ただ、実際に切腱術を施行するか否かは、足趾の拘縮の程度に寄ります。腱切離によって歩行時の足趾安定性を毀損してしまうと、歩行能力が低下してしまうからです。





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