先日、多発骨折の患者さんの手術がありました。
この方は、下肢骨折に加えて橈骨遠位端骨折もあります。


更に健側上肢は、乳房切除術+リンパ節郭清後でした。この場合、ルート確保を患側上肢で行うことは禁忌と言われました。禁忌って、そんなキツイ言葉使うんですか・・・


禁忌という言葉に違和感を覚えたため、乳房切除術後の患者さんでは患肢でルート確保をしてはいけない理由を調べてみました。




理由1 リンパ浮腫の併発リスク


動脈や静脈は閉鎖した脈管というイメージが強いですが、実際にはこれらに加えてリンパ管が毛細血管レベルで細胞外液のやりとりをしています。


特に静脈周囲にはリンパ管が発達しており、リンパ管も細胞外液運搬の役割を果たしています。そして乳房切除後(リンパ節郭清後)では、リンパ管が正常に機能していません。


リンパ管には心臓のような循環ポンプがない代わりに逆流防止のための弁があります。この弁のためにリンパ液を逆流させることもできず、リンパ液は溜まってしまいます。


これがリンパ浮腫です。 一度リンパ浮腫を併発するとなかなか軽快しません。長期にわたってリンパマッサージが必要となるため、患肢でのルート確保は望ましくないのです。




理由2 感染症リスク


リンパ節を郭清するとリンパ液の環流が低下するため、感染に対する抵抗力が落ちます。このため、ルート確保部に感染を併発するリスクが通常よりも高いです。




なるほど、このような理由のため乳房切除術(リンパ節郭清)後の患者さんでは、患肢でルートを確保するのは避けた方がよいのですね! いやいや勉強になりました。







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