Medical Tribuneで興味深い記事がありました。
急性期脳卒中患者のリハ、開始が早すぎると予後が悪化 です。





急性期の脳卒中患者に対し,できるだけ早期にリハビリテーション(以下,リハ)を開始することが各国ガイドライン(GL)で推奨されている。


しかし,Lancetで報告された2,000例超の急性期脳卒中患者を対象としたランダム化比較試験では,発症から24時間以内の超早期にリハを開始することによって,3カ月後の機能的予後が悪化する可能性が示された。


研究グループは現行GLに影響を及ぼす結果だとの見解を示している。第Ⅱ相試験では実現可能性と安全性を確認,歩行の自立でも有望な結果  長期臥床は筋骨格系や循環器系,呼吸器系,免疫系に悪影響を及ぼし,脳卒中患者の回復を遅らせると考えられている。


また,脳の可塑性や回復のタイムウィンドーは短いため,脳卒中発症から早期に介入することが望ましいとされている。こうしたことを踏まえ,脳卒中発症後はできるだけ早期に離床をはかり,坐位・立位や歩行などの訓練を開始することが各国のGLで推奨されている。


しかし,Bernhardt氏らが世界のGLをレビューしたところ,開始すべきリハの具体的な内容は明確に定義されておらず,推奨内容を裏付ける強固なエビデンスもなかった。  


また,早期リハによる効果が期待される一方で,発症早期に頭囲を高くすることで脳血流が減少して虚血ペナンブラが傷害される可能性や,活動によって血圧が上昇し,予後が悪化する可能性も指摘されている。この他,訓練に伴う転倒リスクもある。  


以前報告された急性期脳卒中患者に対する超早期のリハ開始と標準的リハを比較したAVERT試験の第Ⅱ相試験では,発症から24時間以内のリハ開始の実現可能性と安全性が確認され,歩行の自立や費用効果の面でも有望である可能性が示された。


そこで,その第Ⅲ相試験として実施された今回の国際多施設共同試験では,「より高強度の活動を,より早期に実施することで3カ月後の機能的予後を改善し,神経学的合併症を低減し,より早期の歩行の自立を促せる」との仮説を立て,検証した。


5カ国の脳卒中ユニット56施設で実施  対象は,2006年7月~14年10月にオーストラリア,ニュージーランド,シンガポール,マレーシア,英国の5カ国56施設で登録された脳卒中患者2,104例。


18歳以上で初発または再発脳卒中(脳梗塞または脳出血)を発症し,発症から24時間以内に脳卒中ユニットに入室した患者で,遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA)静注療法を受けた患者も含まれた。  


このうち1,054例を超早期リハ群,1,050例を標準的リハ群にランダムに割り付けた。標準的リハの内容は各施設の裁量に委ねた。


一方,超早期リハでは①発症後24時間以内に開始②坐位・立位,歩行の訓練が主な内容③標準的リハに比べ訓練の回数が3回以上多い-の3つの要素を満たすことを条件とした。


発症3カ月後の機能的予後良好の割合は,標準的リハ群に比べ超早期リハ群で有意に低かった。3カ月後の死亡率は標準的リハ群7%,超早期リハ群8%で両群間に有意差はなかった(OR 1.34, 95%CI 0.93~1.93, P=0.113)。


非致死性の重度の有害事象発生率に関しても,両群間に有意差はなく(標準的リハ群20% vs. 超早期リハ群19%),長期臥床に関連した合併症の発生率についても差はなかった。


Bernhardt氏らによると,以前報告された3件のRCTのメタ解析では有意ではないが超早期リハが標準的リハに比べて予後を改善する傾向が示されていた。


ただし,解析対象が計159例と少なかった。これに比べ,AVERT試験は2,000例超を対象としており,RCTとしてはこれまでで最大規模。このことから同氏らは今回の結果は一般化できるものだとの見解を示している。  


ただし,今回「標準的」リハ群でも発症後,中央値で22.4時間以内にリハが開始されており,超早期リハ群との差は約5時間だった。


同氏らによると,研究の対照として実施される「標準的リハ」でも発症からリハ開始までの時間が年々短縮する傾向にあり,このことが超早期リハによる有意な効果が示されなかった一因である可能性があるという。


また同氏らは,今回試験に登録された患者は,先進的で質の高い脳卒中ユニットに搬送された患者のみが対象であったことにも留意する必要があるとしている。  


その上で,同氏らは今回の試験データについて「超早期からの高頻度かつ高強度の活動レジメンよりも,早期からの低強度の活動レジメンの方が望ましいことを示すもの」と説明。


今回の結果により現行の診療GLが再考され,診療に影響を及ぼす可能性があるとの見方を示している。ただし同氏らは,用量依存的関連についての詳細な解析などを経た上でGLの見直しを実施すべきと付言。


①発症後リハを開始すべき最善のタイミング
②具体的な訓練内容
③特に早期にリハを開始すべき患者群の同定
などを今後の検討課題として挙げている。

                                 





今回の報告には驚きました。対象が運動器ではなく脳卒中患者ではあるものの、従来のリハビリテーションに対する考え方を根底から覆す結果だと思います。


日本リハビリテーション医学会の重鎮の先生も「リハビリテーション開始は早期であるほど良い」というスタンスで、肺炎を併発していてもリハビリテーションは実施するというスタンスです。


しかし、今回のLancetの報告は、超早期ではむしろ成績が低下するという結果でした。しかし、ここで注意するべきは欧米での「早期」は日本においては「超早期」とみなされることです。


超早期リハ群のリハビリテーション開始時期は発症から18.5時間、標準的リハ群では22.4時間後からリハビリテーションを開始しているそうです。


日本においては欧米の「標準的」リハ群でさえも、超早期に分類されそうです。このように欧米諸国においては、(日本基準での)早期リハがスタンダードのようです。


しかし、過ぎたるは及ばざるがごとしと言うように、あまりバイタルが安定していない超早期にリハビリテーションを行うことは少しやり過ぎなのかもしれませんね。



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