整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

人工股関節全置換術

THA: ドレ―ピングは結構重要

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先日、人工股関節全置換術(THA)を施行しました。昔と比べるとかなり皮膚切開が小さくなってきているので、ドレーピングの重要性を再認識しました。


患者さんのBMIはやや高めで、皮膚から筋膜までの距離が結構大きな方でした。私は側臥位での後外側アプローチなので、ドレープはふんわりと真上から貼付するようにしています。


しかし、助手の先生の手元が少し狂うと、皮膚に変な張力が掛かったままドレープが貼付されてしまいます。大袈裟に言うと、皮膚が「ぐにゃりと曲がった状態」になるのです。


皮膚の表面が「ぐにゃりと曲がった状態」になっていることは、あらかじめ皮膚ペンで描いた予定皮膚切開の線を確認するとよく分かります。


自分が切開を加えたい部分から少し離れた部位に、皮膚ペンで描いた予定皮膚切開の線が移動してしまっているのです。。。


小さな皮膚切開で行う手術やBMIが高めの患者さんの手術では、このドレーピングの不具合が結構大きな影響を与えてしまいます。


このため、私にとって手術で最も緊張する瞬間がドレーピングです(笑)。「始めよければ終わりよし」ではないですが、ドレーピングが決まれば気持ちよく手術が終わることが多いです。






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カップと寛骨臼の前方開角が不一致?!

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先日、人工股関節全置換術(THA)がありました。今回の症例は、高齢者の急速破壊型股関節症(RDC)でした。RDCにありがちなのですが、立位で強烈な骨盤後傾を認めました。



臥位 - コピー



上図は、術後の単純X線像(臥位)です。臥位ではなんの変哲も無い股関節です。カップの外方傾斜角は40度ですが、前方開角はほぼゼロとなっています。





立位 - コピー



次は、術後の単純X線像(立位)です。見ての通り、強烈な骨盤後傾を認めます。ここまで極端な症例は、さすがに珍しいですね。小骨盤腔が潰れて完全に無くなっています。


そして、肝心のカップなのですが、外方傾斜角は40度で、前方開角もいい感じでついています。目測で前方開角20度ぐらいでしょうか?


かなり自分に都合の良い希望的バイアスが入っていますね(笑)。では、実際には何度ぐらいなのでしょう。下図は術後CT(臥位)です。臥位なので、カップの前方開角は0度です。



CT - コピー



カップの前方開角と寛骨臼の前方開角は、全く合っていないことが分かります。寛骨臼の前方被覆がほとんどありません。解剖学的な寛骨臼の形態に対して反抗的なカップ設置角度です。


このような臥位と立位で極端に骨盤の角度が変わる症例では、どちらに合わせてカップを設置するのかは難しい問題です。


日常生活で脱臼する可能性が高いのは就寝中(臥位)ではなく日中(立位)なので、私は、できるだけ立位の状態に合わせてカップの前方開角を設置するようにしています。


術中から寛骨臼の解剖学的前方開角に全く合っていないのは分かっているので結構コワいですが、術前計画を信じてカップを設置しています。








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THA術後にリハビリテーションは不要?!

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以前から気になっていたブログ記事をご紹介します。整形外科 論文ナナメ読みのTHAとリハビリテーションに関する記事です。


JBJS(Am)の紹介記事で、「THAにはリハビリテーションは無意味ではないのか?」という、リハビリテーション関係者には少しキツイ内容です。



Formal Physical Therapy After Total Hip Arthroplasty Is Not Required: A Randomized Controlled Trial, Austin, Matthew S. MD et.al,  Journal of Bone & Joint Surgery - American Volume: 19 April 2017 - Volume 99 - Issue 8 - p 648–655



THAは、完成度の高い術式のひとつであり、良好な臨床成績が得ることが可能です。本研究では、THAの良好な臨床成績にリハビリテーションがどの程度寄与するのかを調べました。


その結果なのですが、意外にもあまり口出ししないリハビリテーションでも、従来の方法とほぼ同等の臨床成績が得られることが分かりました。


費用面の考慮すると、従来から行われている伝統的なリハビリテーションは不要であると主張されても反論できません。リハビリテーション科医師や理学療法士にはキツイ結果です。


個人的には、関節可動域改善にはリハビリテーションの力が大きいと思うのですが、JBJSにアクセプトされていることを勘案すると、治療方針を考え直す必要があるのかもしれません。




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外科医のピークは何歳ぐらいなのか?

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先日、人工股関節全置換術(THA)を施行しました。この年齢になっても、執刀前には未だに緊張します。つくづく自分がチキンであることを実感します(笑)。


そうは言っても慣れた手術なので、特に問題なく終了するのですが、術者の年齢に関して、先日見かけた下記のジャーナルが気になったのでご紹介します。



Markar SR et al. Surgeon Age in Relation to Prognosis After Esophageal Cancer Resection. Ann Surg. 2017 Apr 7. doi: 10.1097/SLA.0000000000002260. [Epub ahead of print]





この研究では、食道癌切除術を受けた患者1761例と術者139人において、術者の年齢と患者予後の関連をコホート研究で検証しています。


食道癌手術という外科手術の中でも難易度の高い手術であるためか、研究対象の術者の年齢は50歳台がメインとなっています。


結果は、術者の年齢が52-55歳のグループが、90日死亡率・5年全死亡率・5年食道癌死亡率とも、51歳以下や56歳以上のグループと比べて最も低かったようです。


整形外科領域では50歳台前半の医師といえば、そろそろ一線から退こうとする医師が多くなる年台です。大学・基幹病院とも、40歳台が最も幅を利かせている施設が多いと思います。


しかし、難易度の高い手術においては、50歳台前半が最も「脂がのっている」年台なのかもしれません。そう考えると、私も外科医としてはまだ10年ほど寿命がありそうです。


ただ、私が施行している手術は、決して難易度の高い手術ではないことがネックではありますが・・・





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セメントレス人工股関節の機種選択

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日本整形外科学会雑誌のVol.91 No.4 April 2017の238-242に興味深い教育研修講座が記載されていました。長崎大学の尾崎教授による「セメントレス人工股関節の機種選択」です。


思いつくままに気付きを記します。まず、日本で行われている初回THAの種類別の頻度ですが、2016年3月31日のTHAレジストリ―統計では下記のごとくでした。

  • セメントレス人工股関節 76.11%
  • ハイブリッド人工股関節 10.62%
  • セメント人工股関節   13.16%


やはり、セメントレスTHAが大部分を占めますが、意外とセメントTHAも健闘しています。個人的には、セメントTHAはカップ側の設置技術の伝承が難しいことが課題かなと思いました。


 
セメントレスステムの分類については、Khanujaらの分類が広く用いられています。Type 1~3は近位固定を、Type 4は遠位固定を意図したステムです。



キャプチャ - コピー




ステムのネック周囲の形状は、脱臼に対する安定性、ポリエチレンライナーの摩耗、ステム強度を考える上で重要です。


ヘッド・ネック接合部が細いほど、脱臼に対する安定性が向上し、ポリエチレンライナーの摩耗粉発生を抑制します。一方、細いほど強度低下や接合部での金属摩耗リスクが上昇します。

 

ステム近位のデザインに関しては、近位外側を小さくするとステム挿入が容易になりますが、初期固定性が悪くなるトレードオフの関係です。両者のバランスが重要だと考えます。


ステム遠位部の表面加工は、サンドブラストからポリッシュまでさまざまあります。いずれも、近位の強固な固定から遠位の緩やかな固定への移行のコントロールを意図しています。


最後にカップですが、機種によって設置時の感触が異なるため、可能であれば事前にカップのサンプルを手に取ってカップ表面の摩擦抵抗を実感しておくとよいそうです。


私の場合、だいたい決め打ちで2種類のカップしか使用しませんが、ときどきtantalum製のカップを用いると、かなり感覚が違うので気を使います。


以上、セメントレス人工股関節の復習をさせていただきました。しかし、このような教科書的な講演をするのは結構大変でしょうね。さすが、旧六医大の一角・長崎大学の教授です。




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