整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

人工関節

感染人工股関節でのリストリクター

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感染した人工股関節や人工骨頭を最置換する際は、普段セメントレスステムを使用している医師であってもセメントステムを選択することが多いと思います。


セメントステムを使用する際にはセメントリストリクターを使用しますが、感染症例では市販のセメントリストリクターを使用するのは何となく気持ち悪いものです。


そこで何か良い方法はないかと思って、経験豊富な何名かの医師に質問してみました。その中で出た案は下記のごとくです。


  1.  2セメント(抗生剤含有)
  2.  同種骨+抗生剤
  3.  人工骨(β-TCP)+抗生剤



2セメントテクニック


まず抗生剤含有セメントをステム先端付近の髄腔内に充填する。硬化したのちに本番のセメントを充填してステムを挿入する。


ただ、
セメントがたれてしまってリストラクターとしての用をなさなかったり、近位までセメントが入ってステムが入らなくなるトラブルが発生しやすいとのことです。



同種骨+抗生剤


某旧帝国大学では、チップにした同種骨をガーゼで茶巾様に包んで、生食500ml+セファゾリン 2g に1時間浸しておくそうです。


こうすると同種骨に抗生剤が浸軟して徐放効果も期待でき、確実なリストラトも得られるとのことです。なるほどですね!



人工骨(β-TCP)+抗生剤


こちらは上記(同種骨+抗生剤)の亜型です。同種骨を利用できるのは大学や大規模基幹病院であり、普通の市中病院ではなかなか難しいのが現状です。


市中病院では同種骨の代わりに人工骨を使えばよいと思います。気孔率の高い β-TCP を選択します。気孔率が低いと、髄内でうまく砕けないので注意が必要です。








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結果が分かりきった研究は無意味?

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「結果が分かりきったことをやるのは愚の骨頂」とも言えないようです。Medical Tribuneの
"パラシュート試験"? 膝OAへのTKAと非外科的治療をRCTで比較 を御覧下さい。


OAに対して非外科的治療のみを行った群と,人工膝関節全置換術(TKA)も行った群を比較したRCTは、当たり前の結果を追認するだけの「パラシュート試験」と批判されてきました。


このほど報告されたRCTの結果も、予想通りTKA群に軍配が上がりました。しかし、やってみなければ分からないこともそこには潜んでいたとのことです。





中等度~重度の変形性膝関節症(膝OA)患者約100例を対象に,人工膝関節全置換術(TKA)の有効性を非外科的治療と比較したランダム化比較試験(RCT)の結果がN Engl J Med(2015; 373: 1597-1606)で報告された。


それによると,1年後の疼痛や機能,QOLなどを含むアウトカムは非外科的治療に比べてTKAで優れていたが,TKAでは重篤な有害事象の発現も多かった。また,非外科的治療でも多くの患者で臨床的に有意な改善が認められた。


同誌の付随論評では,今回のRCTは既に有効性が明確な介入について検証する無意味な"パラシュート試験"ではなく,治療選択の際に役立つ有用なデータを含む意義のある試験だとの見解が示されている。


米国では年間67万件以上のTKAが施行されているが,非外科的治療と比べたTKAの有効性の高さを支持する質の高いエビデンスは不足している。 


今回のRCTでは,片側TKAの適応がある中等度~重度のX線学的膝OA患者100例を,TKA施行後に12週間の非外科的治療を行う群(TKA群)と非外科的治療のみを行う群(非外科的治療群)にランダムに割り付け,12カ月間追跡した。


intention-to-treat解析におけるKOOS4スコアの改善度は,手術群において非外科的治療群と比べて高かった(32.5点 vs. 16.0点,調整後の平均値の差15.8点,95%CI 10.0~21.5点)。 


一方,重篤な有害事象は手術群で非外科的治療群と比べて多かった(24件 vs. 6件,P=0.005)。手術群における主な有害事象は,深部静脈血栓症(3例),猛撃矯正を要する膝のこわばり(3例),深部感染症(1例),大腿骨顆上骨折(1例)などであった。 


Skou氏らは「今回のRCTでは,膝OA患者に対しTKA施行後に非外科的治療を行う方が,非外科的治療のみを行うよりも,痛みの緩和,機能とQOLの改善における効果が高かった。しかし,臨床的に有意な改善は両群ともに得られており,有害事象は手術群で多かった」と述べている。


誰もが有効だと思い込んでいるような治療法を,あえて検証する試験をパラシュート試験という。飛行機から飛び降りるときにパラシュートが必要であることを,疑う人はまずいないだろう。TKAに関するRCTもパラシュート試験だと批判されてきた。しかし,本当にそうだろうか。


米・Harvard Medical SchoolのJeffery N. Katz氏は"Parachutes and Preferences -- A Trial of Knee Replacement "と題した付随論評(2015; 373: 1668-1669)で,TKAの有用性を検証する意義はあると強調。


その理由として①TKAには死亡を含む深刻なリスクがある(術後90日死亡率は0.5~1.0%)②100%の効果が見込めるわけではない(約20%の患者が術後6カ月後も痛みを訴えている)③他にも有効な治療法が存在する④理想の治療法は個々の患者で異なる―ことなどを挙げている。 


同氏は特に,非外科的治療を受けた患者の3分の2超で臨床的に有意な改善が得られたことに着目。「TKAによる劇的な疼痛改善効果に強く気持ちが動かされる患者はTKAを選び,リスク回避を重視する患者は非外科的治療を選択するだろう。医師は,適切なデータを示し,患者の意見に耳を傾けるべきである」と述べている。






非常に含蓄のある論文だと思います。確かに、人工関節は劇的な疼痛改善効果を獲得できますが、深刻な有害事象に遭遇するリスクにさらされます。


「劇的な疼痛改善効果を重視する患者はTKAを選び、リスク回避を重視する患者は非外科的治療を選択するだろう。医師は適切なデータを示し、患者の意見に耳を傾けるべき」は至言です。


基本的に整形外科疾患は生死に関わることが少ないので、究極的には手術を受けないという選択枝を選ぶことができる場合が多いです。


このような疾患の特性を踏まえた上で、できるだけバイアスの掛かっていない適切なデータを示した上で、患者さんにも治療の是非を考えてもらうことが理想だと思います。


私は人工関節を生業にする身なのですが、幸いにも私の勤務先は医師の倫理を曲げてまで売上増進を要求する病院ではありません。


手術適応のある患者さんには人工関節の情報提供を行ったうえで手術を勧めますが、同時に劇的な効果の裏側に潜むダークサイドも患者さんに積極的に開示していこうと思います。





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たかが病院食、されど病院食

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先日の医局会で、病院食のことが議題に上りました。
私が勤務する病院は私立病院なので、経営面を考えることが多いです。


このため病院の方針として食事は可能な限り、治療食を選択するようにしています。これ自体は何ら問題無いことだと思っていましたが、患者さんから病院食に関する意見がありました。


曰、病院食が非常にマズイとのことです・・・。特に高脂血症に対する食事の評判が良くありません。常食の患者さんとの食事の美味しさに差があり過ぎるようです。


これは意外な盲点でした。私も当直の際に検食をいただきますが、一度もマズイと思ったことはありません。しかし、これは当直医に出される検食が、常食だったためのようです。


入院中は、生活が制限されるため患者さんのストレスは溜まりがちです。その中で食事は唯一(?)の楽しみとなっている患者さんも多いでしょう。


その唯一の楽しみである食事がマズイようでは、病院の評判に関わります。特に人工関節をウリにしている病院では反対側も手術が必要な患者さんが多いです。


「食事がマズイから反対側の手術をこの病院では受けたくない」という患者さんまで出てくるようでは、それこそ病院経営の根幹に関わる事態です。


確かに競争の激しい産科病院では病室や食事は贅を尽くしています。以前、地方の公立病院に勤めていた際、私立産科病院と比べて病室や食事がダメなので閑古鳥が鳴いていました。


たかが食事、されど食事です。今回の医局会では、治療食と美味しさの兼ね合いで貧血食がベストチョイスという結論になりました。貧血食は常食にプラスアルファで副食が付くからです。


このように、医療サイドからは盲点になるようなことが患者さんは多々あるようです。この意味で、患者さんへのアンケートやヒアリングは重要だと改めて認識しました。



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