先日、術中に気付きを得ました。
アルバイト先の病院で、手術の前立を務めた時の出来事です。


人工骨頭置換術で、術者はそこそこ年配の先生でした。私たちの世代は電気メスで皮下を展開する医師が多いですが、昭和年代卒の先生の中には円刃で展開する方もいらっしゃいます。


電気メスと円刃では、見た目の展開の光景が少し異なります。どちらかというと円刃の方が、かっこいいイメージです。


感心して見ていた時、ふと円刃で皮下を展開するのはあまり良くないのでは? と思い当たりました。何故なら、皮下の展開で使用している円刃は、皮膚切開で用いていたからです。


皮膚の表面には細菌叢があります。もちろん、術前に消毒しますが、100%完全に除菌することは不可能です。そんなやや「汚い」皮膚を切開した円刃で、皮下を切開すると・・・


特に、人工関節系の手術では、ちょっと気持ち悪いなと思うのは私だけでしょうか? おそらくエビデンスは無い話だと思います。


しかし、可能性としてはゼロではありません。組織へのダメージを考えると電気メスよりも円刃の方が望ましいです。しかし、皮膚切開した円刃をそのまま使うのは微妙ですね。


解決策としては、皮膚切開と皮下の展開で使用する円刃を分けることです。これなら、問題無いですが、残念ながらそこまで気を使っている方を見たことはまだありません。




2018.1.6 追記

たくさんのコメントをいただきました。皮膚切開を加えて円刃はやはり感染源になるようで、成書にも記載されているようです。また、JBJSも教えていただきました。


  • 人工関節周囲感染対策における国際コンセンサス(https://cbr-pub.com/book/043.html)
  • Intraoperative bacterial contamination in operations for joint replacement.J Bone Joint Surg Br. 1999 Sep;81(5):886-9. http://bjj.boneandjoint.org.uk/content/81-B/5/886.long
  • Should we use a separate knife for the skin? J Bone Joint Surg Br. 2006 Mar;88(3):382-5. http://bjj.boneandjoint.org.uk/content/88-B/3/382.long


皮切に用いた円刃は一回下に落として、追加皮切では新しい円刃を出す先生もいらっしゃるようです。目から鱗のことばかりで勉強になりました。ありがとうございました!







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