昨日は昼から急患を診ました。この方はまだ30歳台なのですが、400ccバイクを持ち上げてから腰痛が出現して体動も困難となって救急受診されました。
搬送時に腰椎の叩打痛を丹念に調べましたが、何度叩打しても痛みが無かったです。また圧痛もほとんどありませんでした。しかし単純X線像では、L5椎体上縁に圧潰を疑う所見を僅かに認めました。
若年なのですが疼痛の程度が高度だったのでMRIを施行しました。MRIではfat suppressionでL5椎体上縁の高輝度変化を認めました。やはり新鮮なL5圧迫骨折だったのです。
画像所見を確認した上で、もう一度L5の叩打痛を調べましたが、やはり「痛くない」とのことでした。通常、若年者は高齢者と比べて知覚がしっかりしているのですが・・・? 不思議ですね。
以前にも記事にしましたが、腰椎圧迫骨折では意外と叩打痛が無いケースがあります。確かに身体所見は重要ですが、それだけを妄信すると骨折を見落とすことがあることを再確認しました。
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叩打痛
春先から夏にかけては、新人さんが入職する時期です。つまり、整形外科を志す専攻医と仕事をする機会が多くなる季節なのです。彼らには外傷患者さんの身体所見の取り方を、いつも下記のように説明しています。
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外傷の患者さんを診察するにあたっては、骨折の有無を診断することは非常に重要です。単純X線像で確定診断をつけるケースが多いと思いますが、身体所見も大いに参考になります。
身体所見において、骨折と関節捻挫・靱帯損傷との最も大きな違いは叩打痛の有無だと思います。もちろん損傷した関節部分を叩打すると関節捻挫・靱帯損傷でも痛みを訴えますが、関節周囲の骨を叩打してもそれほど痛みを訴えないことが多いです。
また、軸圧痛があれば骨折している可能性が高くなるので重要な所見だと思います。大腿骨頚部骨折に関しては軸圧痛に加えて股関節の他動時痛も重要な所見となります。
慣れてくると身体所見だけでも、80%以上は骨折の有無を判断できるようになる印象です。迅速かつミス無く外来業務をこなすためには身体所見を適切にとって、治療方針を考えながら検査依頼するのが望ましいと思います。
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今日の午前は外来でした。
先週の日整会出席のために積み残した残務処理もあって結構大変でした。
2日前に仰向けに転倒した80歳女性の方が腰痛で初診されました。この方は1ヵ月に1度の頻度で膝関節注射を施行しており、とてもしっかりされた方です。
自発痛は両上殿部にあり、胸腰移行部から腰椎にかけては叩打痛・圧痛とも何度施行してもありませんでした。しかし、単純X線像を確認するとL2圧迫骨折を認めたので、もう一度L2を叩打しましたが、「少しだけ痛いかもしれませんね~」とおっしゃられるのみです。
この方のように新鮮脊椎圧迫骨折であっても、叩打痛をほとんど認めないケースが多いように思います。私の感覚では、①MRI ②CT ③単純X線像 ④胸腰移行部の関連痛(上殿部痛) ⑤現病歴 ⑥脊椎圧痛 ⑦脊椎叩打痛 の順に感度が高いように思います。
特に⑥・⑦はほとんど参考にならないケースが多いので、注意が必要だと思います。全例で①・②を施行するわけには行かないので、実際の臨床の現場では③・④・⑤・(⑥)あたりが重要になってくるのかなと考えています。
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