先日にご紹介した日本整形外科学会雑誌 90(5)2016の千葉大学の大鳥精司先生による 「脊椎障害の画像評価における進歩」 教育研修講座のつづきです。



前回は、腰部脊柱管狭窄症のsedimentation signで脱線してしまい、本題の脊椎障害の画像評価に対する感想を述べることができませんでした。


まず、慢性腰痛患者さんに対するブロック注射から得られた知見を参考にすると、脊椎由来の疼痛の発生部位として椎間板39%、椎間関節15-32%、仙腸関節13-18.5%と報告されています。


これらの痛みは従来のMRIでは捉えることができませんでしたが、68Ga-citrate PET/CTや11C-DDE PET/CTなどで、ある程度評価可能となっているそうです。


例示されている頚椎捻挫症例のPET/CTは頚椎椎間関節に微小炎症由来の疼痛を可視化していました。ついに頚椎捻挫も画像で評価できる時代が来たのか・・・


更に、椎間板由来の痛みに対しては、MR spectroscopy、T2mapping、T1rho mapping等が、直接の椎間板性腰痛との相関関係が報告されています。


また、拡散テンソル画像(fiffusion tensor imaging; DTI)は水分子の拡散を記録して、神経線維などの拡散方向に制限のある組織内での拡散異方性を捉える撮像法です。


この撮像法によって、髄鞘など組織内水分子の拡散異方性が強い神経線維が描出可能となり、椎間孔狭窄や脊柱管狭窄などの可視化や定量的評価ができる可能性が示されています。


今回紹介されているPETや高磁場MRIが一般化するのは難しそうですが、お金に糸目をつけなければ、疼痛も可視化できる時代がやって来たようです。




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