先日、外来をしていると慢性腰痛の診察希望で患者さんが初診されました。
単純X線像ではOAを認めるのみだったので、トラムセットを投与開始しました。
効果はそこそこあったので、増量しましょうという話をして診察を終了しようとしたところ、「ところで、ご相談があります」とエラク神妙な表情でおっしゃられました。
「何でしょう?」とお伺いすると、その方の職場の同僚は20名足らずにも関わらず、この2年ほどで5名の方が腰椎の手術を受けたとのことでした。
その職場は化学系製品を製造する中小企業だそうですが、どうもこの患者さんは取り扱っている化学物質が腰椎に悪い影響を与えているのではないか? と疑っているようです。
何らかの化学物質が腰部脊柱管狭窄症との間に因果関係があるという話は聞いたことが無かったので、それは単なる偶然でしょうと軽く聞き流しました。
しかし、この患者さんは「5/20が単なる偶然でしょうか?」としつこく食い下がってきます。いやぁ、単なる偶然だと思いますが・・・と言いつつ、少し嫌な感じがしました。
思い切って「それは、もしかしてひとつの医療機関で手術されたのですか?」と質問すると、全員が同じ医療機関の同一医師に、この2年ほどの間に手術を受けたそうです・・・
どうやら手術を受けた方が、同じ症状に悩む職場の同僚にその医師の受診を勧めた結果、芋づる式に同一医療機関のある特定の医師に手術を施行されたということが真相だったのです。
実は隣の県で大々的に売り出していた(※)脊椎外科医が、私の勤務地の近くで2年前に脊椎専門病院を設立しました。そして今回の方の職場の同僚達はこの医師に執刀されたようです。
※ この医師の一般向け著書を一読すると、典型的なバイブル商法のニオイを感じました
私はこの医師と直接の面識はないのですが、頚椎椎弓形成術を勧められた受傷後3ヵ月の外傷性頚部症候群の20歳台女性患者さんのセカンドオピニオン診察を担当した経験があります。
その件以来、警戒していた医師なので少し衝撃を受けました。職場で取り扱っている化学物質ではなく、その医師の治療方針が「偶然ではない何か」を生み出しているのだと思います・・・
この2年間で同一職場で手術を施行された5名の患者さんたちは、実際に手術適応であったのであろうとは思いますが、少し複雑な気持ちになった外来でした。
同一医師
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