私は1ヵ月を越える処方が予想される場合、鎮痛剤ではトラムセットを処方することが多いです。トラムセットはアセトアミノフェンとオピオイドの合剤なので、腎臓への負担が少ないからです。
トラムセットの副作用として、便秘と嘔気が最もメジャーです。便秘は個人差があるものの、重度であれば服用を中止するしか方法がありません。
一方、嘔気に関しては数日服用すると耐性ができて症状が軽減することがあります。このため、嘔気に関しては数日はがんばって服用してもらうことが多いです。
しかし、先日診察した患者さんで思わぬピットフォールがあることに気付きました。私は初回投与の際には1週間後に副作用の有無を確認するために再診してもらいます。
この際に、患者さんは嘔気があることを訴えられました。私は当然オピオイドの副作用である嘔気だと思ったのですが、ポロッと、胃が痛くてムカムカするとおっしゃられるではないですか!
つまり、この患者さんの嘔気はオピオイドの副作用ではなく、アセトアミノフェンによる消化管障害の症状だったのです・・・
トラムセットにおいて、「嘔気=オピオイドの副作用」のことが多いです。しかし、「嘔気=アセトアミノフェンによる消化管障害の症状」であることがときどきあります。
杓子定規に、嘔気=オピオイドの副作用と考えてナウゼリン等の制吐薬を処方するのではなく、胃部の圧痛などが無いかを確認する機転も必要だと思います。
一般的で使用頻度の高い、鎮痛薬・睡眠剤・感冒薬・胃薬・止痢薬・去痰薬・便秘薬等の薬剤が、全13章にわたって系統立てて書かれています。それぞれの章の最初に、薬剤の分類図が記載されています。各系統間の薬剤の使い分けも平易な文章で書かれており実践的な書籍です。
姉妹本に『類似薬の使い分け』があります。こちらは全15章からなり、降圧剤、抗不整脈薬、狭心症治療薬、脂質異常症治療薬、糖尿病治療薬、消化性潰瘍治療薬、鎮咳薬、皮膚科疾患治療薬、抗菌薬などが1章ずつ割り当てられています。