先日、外来で脊椎圧迫骨折のフォローをしている患者さんから、最近すぐにお腹が膨れてあまりご飯を食べられなくなったという訴えがありました。
この患者さんは、骨粗鬆症が高度のためにいくつかの脊椎に圧迫骨折を併発しています。見た目にも円背であり、脊椎アライメントは著明な後弯変形しています。
今回のように脊椎圧迫骨折のためにアライメントが変わってしまった患者さんには、逆流性食道炎や失禁などを併発することがあります。
円背のために腹腔容積が減少します。腹腔容積が減少すると、腹圧が高まって逆流性食道炎を併発し、膀胱内圧が高まるために失禁を併発します。
一方、腹腔容積が減少することで胃の容積も減少するため、今回の症例のように以前と比べてお腹が膨れて食事量が落ちるということも併発します。
もちろん、食道や消化管の通過障害の存在を除外診断する必要はありますが、そのような障害が存在しない場合には、円背のために食事の摂取量が落ちたことになります。
私たちは脊柱アライメントや椎体変形そのものに目が行きがちですが、それ以外にも各種の腹部症状を併発しうることを知っておくべきでしょう。
自治医科大学准教授の星地先生の経験・知識を余すところなく収めたサブテキストです。定番と言われている教科書に記載されている内容は素直に信じてしまいがちですが、実臨床との”ズレ”を感じることがときどきあります。このような臨床家として感じる、「一体何が重要なのか」「何がわかっていないのか」「ツボは何なのか」を自らの経験に基づいて完結に述べられています。