先日、不安定型の大腿骨転子部骨折の手術がありました。不安定型骨折では骨膜の連続性が破綻しているため、牽引しても充分な整復位を獲得できないことが問題となります。
今回の症例は粉砕しているものの、骨膜連続性が破綻しているか否かは牽引するまで分かりませんでした。骨膜破綻に気付いたのは牽引しても全く整復できなかったからです。
骨膜が破綻すると、近位骨片は外旋筋群に引っ張られて過度に外旋します。ある程度骨膜に連続性がある場合には、下肢を内旋位で牽引することで近位骨片は整復されます。
しかし、骨膜の連続性が完全に破綻すると、下肢を内旋位で牽引すると回旋転位が増大するだけです。このような場合には下肢を近位骨片に合わせて外旋位で牽引する必要があります。
下肢を外旋位で牽引すると骨折部の透視が非常に分かりづらくなります。このため、手術台を健側下に傾けて近位骨片の外旋位を補正する必要があります。
上図では、健側である右側を傾けて、骨折部が内外旋中間位となるように調整しました。こうすることで綺麗な整復位を得つつ、ストレス無く手術を施行することができます。
牽引しても全く整復できないときには焦りますが、回旋転位に関しては今回のような方法で対応することが可能です。大腿骨転子部骨折のちょっとしたTIPSをご紹介しました。
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