昨日の午前7時30分に97歳の方が搬送されて来ました。大腿骨頚基部+転子下骨折で、18年整形外科医をしていますが高齢者の低エネルギー外傷としては初めて見るタイプの骨折でした。
昨日は年内最後の手術可能日だったので、いつものごとく、この方も当日手術を敢行しました。今回の手術の最大のネックは内固定材料の確保です。
あまり経験の無い骨折型だったのでしばらく考えたのですが、オーソドックスにラグスクリューを2本挿入できる髄内釘を選択しました。朝一番に発注したので正午には病院に到着しました。
今回は午前6時ごろに受傷、7時30分に救急搬送されました。8時30分に入院で、16時に手術が終了しました。珍しい骨折型ですが、受傷から10時間で骨接合術が終了したことになります。
これ以外にも立て続けで手術があったので、非常に忙しい1日でした。まあ、患者さんの役に立っているので、疲れはしましたが満足感はあります。
当日手術の際に、私が行っている検査は下記です。
① 心機能
心エコーをルーチン化して、駆出率(EF)を参考にしています。
おおよそ60%以上あると安心ですが、ときどき40%ぐらいの方がいるので注意が必要です。
② 高度弁膜狭窄症の有無
心エコーをルーチン化しています。 高度弁膜狭窄症が存在すると補液に細心の注意が必要です。
③ 腎機能の把握
手術まで時間が無いので、eGFRを参考にして補液量や抗生剤の投与量を調整しています。
④ 抜管不能な重度肺炎の有無
肺炎は、大腿骨近位部骨折の主な受傷原因のひとつなので、常に注意が必要です。
胸部X線像、血液生化学で確認しています。
疑わしい場合には胸部CT施行の上、内科医に相談です。
昨日の方は、上記について全ての項目をクリアしているので、
私も安心して手術を施行できました。
★★★ 管理人 お勧めの医学書 ★★★
整形外科医なら誰もが所有している骨折治療のバイブルです。豊富な図や画像が提示されており、骨折手術におけるAOの考え方や基本原則を学べます。
AO法骨折治療