先日、外反肘による遅発性尺骨神経麻痺に対する尺骨神経前方移行術がありました。
偽腫瘍は尺骨神経溝部に存在しており、中枢側の筋間中隔の切離もばっちり施行しました。
尺骨神経の前方移行(移動)もスムーズに可能で、特に問題なく手術は終了しそうだったのですが、ここで問題が発生しました。皮下の脂肪組織を剥離する前にターニケットを解除したのです。
術後血腫予防のためにターニケットを解除して止血したまではよかったのですが、皮下の脂肪組織からも少量ですが出血します。このため、どこまで脂肪組織かが分からなくなったのです・・・
駆血を解除した状態で脂肪組織を正確に見極めることは非常に難しいです。特に、今回は皮下脂肪が少ない方だったので、なおさら分かりにくいです。
最終的にはうまく脂肪組織を展開できましたが、この段階で10分ほど時間を浪費してしまいました。ターニケットを解除する順番の問題で、ここまで手術操作が難しくなるとは・・・
今回の経験で、尺骨神経前方移行術では皮下脂肪組織の展開が終了するまでは駆血を解除してはいけないことを学びました。
広島大学名誉教授の津下先生による、手の外科における必須の医学書です。特に、「私の手の外科」は津下先生直筆のイラストが豊富で、非常に分かりやすく実践的な医学書です。