整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

帯状疱疹ワクチン

帯状疱疹はワクチンで予防できる!?

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Medical Tribuneで興味深い記事がありました。
VZV特異的細胞性免疫の低下が帯状疱疹を招く です。




帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛(PHN)は激しい痛みをもたらす疾患だが,高齢化の進行で患者数が増え続けており緊急の対策が求められている。米国では高齢者の帯状疱疹予防に高力価の水痘ワクチンが用いられており,日本でも水痘ワクチンの適応拡大が申請中である。


水痘と帯状疱疹は同じウイルス(varicella -zoster virus;VZV)によって起こるとはいえ,病態の異なる2疾患がなぜ同じワクチンで予防可能なのか。その理論的背景として,香川県の小豆島で行われた大規模前向き疫学調査The Shozu Herpes Zoster Study(以下,小豆島スタディ)があった。


小豆島スタディは,小豆島の50歳以上の住民を対象に,2008年4月〜13年3月にかけて実施された。登録者をA調査の6,837人,B調査の5,320人,C調査の365人(60歳以上)に振り分けた。調査期間は登録時より3年間で,月1回,帯状疱疹症状の有無などを尋ねる電話調査を全例で行い,B調査では登録時の皮内テスト,C調査では登録時および1,2,3年後の皮内テストと血液検査を追加した。  


調査を行った3年間の帯状疱疹発症者は396人,年間発症率は1.07%だった。これは米国のOxmanらの報告に近似した数値である。PHNの発症者は56人で,帯状疱疹からの移行率は14.1%だった。性別では,男性137人(年間発症率0.83%),女性259人(同1.27%)と,女性の発症が多かった。年齢層で検討すると,男女とも70歳代にピークがあり,80歳以上で低下していた(図1)。


図1



皮内テストで紅斑長径を測定できたのは5,527例で,平均値は14.24mmだった。男女間で差はなかったが,年齢上昇にしたがって紅斑は有意に小さくなっていた(図2)。


図2


また,過去の帯状疱疹罹患歴で比べると,「なし」例で有意に小さかった。奥野氏はこれらの結果から「VZVに対する細胞性免疫は加齢で弱まり,帯状疱疹罹患で増強する」とした。


一方,C調査群では対照的な結果が得られた。いずれの検査法でも60歳代<70歳代<80歳代と,加齢に伴い液性免疫が有意に強まっていたのである。すなわち,VZVに対する細胞性免疫は加齢で弱まるが,液性免疫は増強することが確認された。


登録時の皮内テストで紅斑長径を測定した5,527人からは,期間中に170人が帯状疱疹を発症した。この発症の有無で平均紅斑長径を比較すると,発症者の8.411mmに対し未発症者は14.425mmと発症者の紅斑が著明に小さかった。両者の差は,性,年齢,帯状疱疹罹患歴を共変数とする共分散分析でも有意であった(P<0.0001)。PHNについて検討を行うと,発症者29人の平均紅斑長径は5.788mm,未発症者は14.285mmと,帯状疱疹と同様の結果が得られた。  


そこで,全例(5,527例)を紅斑長径5,10,15,20,25mmで6群に分け,帯状疱疹の発症率を比較した。すると,全例の発症率は1.03%だったが,5mm未満例は2.49%,25mm以上例は0.33%と,紅斑が小さいほど発症が多いことが確認された(図3)。同様に,PHNの発症率は全例では0.17%だったが,5mm未満例では0.61%と著明に高い値だった。この成績から,VZV特異抗原を用いた皮内テストが,帯状疱疹発症を予測するマーカーとなりうることが示された。






さらに,帯状疱疹発症者の皮膚症状と痛みの重症度をスコア化した検討からは,重症度と皮内反応(紅斑,浮腫)の強さが逆相関することが確認された。以上の結果は,VZV特異的細胞性免疫の低下が,帯状疱疹の発症と重症化,PHNへの移行に強く関わることを示唆している。加齢に伴い帯状疱疹の発症が増えることは広く知られ今回の研究でも確認されているが,VZVに対する細胞性免疫は加齢で低下し,液性免疫は逆に増強することが見いだされた。液性免疫が重要な水痘とは異なり,帯状疱疹の発症には細胞性免疫の低下が決定的である点が示されたのである。  


この点からは,帯状疱疹予防におけるVZV特異的細胞性免疫増強の重要性が見えてくる。2003年に高橋らは,50歳以上の被験者に水痘ワクチン(岡株,微研)を接種。前後で皮内テストを行った結果,接種前に陰性(紅斑長径5mm未満)であった被験者の88%が陽転し,66%が10mm以上になったと報告した。すなわち,水痘ワクチンがVZV特異的細胞性免疫を増強する点は確認されている。  


小豆島スタディと高橋らの成績から,水痘ワクチン接種が高齢者の帯状疱疹予防に有用であることが推測される。





帯状疱疹は、初診で整形外科医が診察することが多いです。今回の研究でも示されているように高齢者に多いので、頸椎症性神経根症・肋間神経痛・腰部脊柱管狭窄症と紛らわしいです。


また、帯状疱疹の既往がある待機手術の患者さんでは、術後に帯状疱疹を併発して帯状疱疹後神経痛(PHN)に移行する可能性があり、主治医としても気を使います。


以前、帯状疱疹の予防効果に期待して、みずぼうそう予防の水痘ワクチンをTHAの術前に施行したことがありますが、今回の研究はその妥当性を示唆しています。


高齢になるにつれて低下するVZVに対する細胞性免疫を補う意味でも、早く日本でも米国のように帯状疱疹ワクチンが承認されれば良いですね。




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術前の帯状疱疹予防法は?

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先日、人工股関節全置換術(THA)を施行しました。
OA自体は特に問題ありませんが、殿部に帯状疱疹後神経痛(PHN)を罹患していました。


PHNの痛みはリリカで充分にコントロールできています。しかし、手術によって免疫力が低下した場合には、術創部に帯状疱疹を併発する可能性があります。


術創部に帯状疱疹を併発した場合、術創部に水疱形成して感染の原因となり得ます。米国ではZOSTAVAXという帯状疱疹ワクチンが承認されており、60歳以上の方に接種されています。


日本では未承認なので帯状疱疹ワクチンを接種できませんが、みずぼうそう予防の水痘ワクチンでも帯状疱疹の予防効果が充分に期待できるそうです。


一方、術後の帯状疱疹併発予防にゾビラックス等の抗ウイルス薬を術前投与することも検討しましたが、さすがにやり過ぎだと思いこちらは断念しました。


幸い、術後に帯状疱疹を併発すること無く無事退院することなりましたが、水痘ワクチンを接種したからと言って完全に帯状疱疹併発を予防することはできません。


結果オーライだったのですが、今後このような症例に遭遇した場合にも今回と同じ対応でよいのか自信ありません。どなたかご存知の方がいらっしゃれば御教示いただきたいものです。



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