整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

弾性ストッキング

弾性ストッキングの禁忌

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先日、大腿骨転子部骨折の高齢者が入院しました。問診をとると、この方は重度の ASO を併発しており、1か月後に大腿部でバイパス手術を受ける予定だそうです。


他院の循環器内科医師から診療情報提供書を取り寄せると、直近の検査ではABIが 0.4しかありません。これは相当悪いな・・・


通常、大腿骨転子部骨折の周術期には深部静脈血栓症を予防するために、弾性ストッキングをルーチンで履いていただいています。


しかし、今回は重度の ASO を併発している方なので、病棟の看護師さんから本当に弾性ストッキングを 周術期に着用していいのか? という確認がありました。


最初、看護師さんからこの事を問われた時、私は特に何も考えることなく OK という返事をしていました。


しかし調べてみると、弾性ストッキングは今回のような動脈血行障害のある患者さんには禁忌となっているようです。


考えてみれば、弾性ストッキングで圧迫されると、もともと血行状態が良くない部位では、
動脈閉塞部より末梢の血流が極端に悪くなる可能性があります。危ないところでした・・・


その他の弾性ストッキングの禁忌もしくは慎重な使用が必要な傷病名としては、下記のようなものが挙げられます。


  • 動脈血行障害
  • 糖尿病
  • 急性期の深部静脈血栓症
  • うっ血性心不全


上記のうち、深部静脈血栓症は急性期のものや抗凝固療法を施行していない症例が禁忌になるそうです。なるほど勉強になりました。









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災害対策に弾性ストッキング準備を!

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平成28年4月14 日からの熊本地震に被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。 今回の地震でも、あらためてエコノミークラス症候群が注目されました。


熊本地震では大きな余震が多発しているため、自家用車に避難して寝泊まりされた方も少なくありません。このような車中泊の被災者は、肺血栓塞栓症を併発する危険性が高まります。



肺血栓塞栓症を予防するために最も重要なことは積極的な運動や歩行ですが、避難している状況では現実的には難しいケースが多いです。


医師にとって肺血栓塞栓症はなじみ深い疾患ですが、病院内の予防措置と災害現場の予防措置は異なります。大震災にあたっては、多数の方が避難所生活や車中泊を余儀なくされます。


日本循環器学会を始めとする7学会(※)は、止むを得ず車中泊する場合や避難所の中で運動がままならない場合の予防法を広報したので、以下に要約してみました。



  • 弾性ストッキングを適切な指導の下、使用する
  • 長時間自動車のシートに座った姿勢で眠らない
  • 時々足首の運動を行う
  • ふくらはぎのマッサージを行う
  • 十分な水分を補給する
  • 可能であれば避難所で簡易ベッドを使用する


重要なのは、寝る際に足をできるだけ心臓と同じ高さに保つことだと思います。自動車のシートで寝る場合には、足元に台を置いてシートとの高さをそろえると良いそうです。


また、最も予防効果の高いグッズである弾性ストッキングは、非常用バッグ(災害用バッグ)の中に常備しておくことが望ましいでしょう。病院勤務であれば容易に購入できると思います。


災害現場では水の確保が難しいですが、弾性ストッキング+足を心臓と同じ高さに保つ+足の運動+下腿マッサージを心掛けることで肺血栓塞栓症をある程度予防することができます。




※ 日本循環器学会 日本静脈学会 日本心臓血管外科学会 日本血管外科学会 日本脈管学会 日本胸部外科学会 肺塞栓症研究会 の7学会





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静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE) その2

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静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE) その1
 のつづきです。


VTEの予防法は、下記のごとくです。

 


弾性ストッキングまたは弾性包帯

血栓の発生は術中から始まっているので、手術中から使用開始します。下肢を圧迫することで表在静脈に流れる血液を減少させて、深部静脈の血流量を増やし、血栓形成を抑えます。一般的な日常生活に近い程度の歩行を行えるようになるまで、24時間装着します。閉塞性動脈硬化症の症例では注意が必要です。

 

間欠的空気圧迫法(foot pump)

足底部の静脈は、自動・他動運動や歩行の際の加圧によって、強力で自然な血液ポンプとして機能しています。術中・術後は、こういった運動が不可能なため、手術中よりフットポンプを用い、足底部を反復的に圧迫することにより、足底部からの静脈血流を保つことでDVTの予防をしています。閉塞性動脈硬化症の症例では注意が必要です。また、既に下肢に静脈血栓が生じていることが分かっている際には、間欠的空気圧迫法で既に生じている血栓を遊離させてPTEを生じさせる可能性と、既に生じている血栓を大きくしない予防効果の両方が考えられており、一定の見解には至っていません。

 

足関節自動運動

 手術直後から足関節の自動運動を促し、翌日からは理学療法士によるリハビリテーションが始まります。これにより、下肢血流停滞が予防されます。

 

術後の体位

臥床している期間は、下肢を挙上することで術後DVTの発生頻度が低下するという報告があるので一般的には下肢を約20度挙上させます。

 

薬物療法

低分子量ヘパリンを術後24~36時間後に手術創などからの出血がないことを確認してから投与開始します。施行期間は10-14日間の投与で日本人におけるエビデンスを得ています。

 

 

いずれも当たり前のことですが、予防効果を得られる機序について再認識しました。

 

 

ただ、③の術後体位で下肢を約20度挙上することは、THA・TKAとも関節の拘縮を作ってしまうで、少なくとも術後数日に留めるべきなのでしょう。

 

静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE) その3 へつづく





日本整形外科学会静脈血栓塞栓症予防ガイドライン


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