Medical Tribuneで興味深い記事がありました。MTX以外のcsDMARDs単独で対応可能なRA患者が存在  ~NinJa 2013年度データベース~ からです。




国立病院機構相模原病院リウマチ科医長の松井利浩氏は,国内コホート研究NinJaの2013年度データ(1万3,945例)を用いて関節リウマチ(RA)治療薬の使用状況を検討。メトトレキサート(MTX)以外の従来型抗リウマチ薬(csDMARDs)のニーズがあることを指摘した。


2013年度NinJaデータベースを検討した結果,MTX以外のcsDMARDsの使用率(延べ使用薬剤数/全登録患者数)は46.6%であった。2003年度データベースから,MTX以外のcsDMARDs使用率の推移を見ると,2003年度(60.6%)から低下するものの,2009年度から2013年度調査結果まで使用頻度はほぼ同等であったことから,csDMARDsに対しては,ある一定のニーズが存在することが分かった。  


MTX以外のcsDMARDsの内訳は,サラゾスルファピリジン(SASP)38.3%,ブシラミン(BUC)とタクロリムス(TAC)がそれぞれ26.2%と3剤で8割以上であった。TACは最近になるほど使用頻度が高かった。  


MTX以外のcsDMARDsの使用法を見ると,単独使用(csDMARDs同士の併用含む)はSASPで36.8%,BUC 25.9%,TAC 21.2%などであった。MTX併用およびMTX・生物学的製剤(Bio)との3剤併用は,SASPではそれぞれ40.6%,41.8%,BUCで23.8%,28.5%,TACで22.2%,20.2%などであったが,Bio併用に関してはSASP 26.5%,BUC 17.8%に対し,TACでは41.0%と高かった。  


年齢別のcsDMARDs使用率を見ると,MTXは60歳代までは6割以上だが70歳代から低下,MTX以外のcsDMARDsは加齢に伴い上昇,80歳以上ではMTXより高く(図),MTX以外のcsDMARDsの中ではSASPが最も高かった。70歳代のMTX以外のcsDMARDs単独使用率は23.4%,80歳以上では34.8%であった。


図表 


使用法別に患者背景や治療経過を分析した結果,疾患活動性(clinical disease activity index)はcsDMARDs単独ではMTX単独より高く,MTX併用と同等,Bio併用および3剤併用に比べて低かったが,年齢や発症年齢はMTX単独,MTXまたはBio併用,3剤併用に比べて有意に高かった。


ステロイド使用率はMTX単独より高く使用量も多かったが,抗シトルリン化ペプチド抗体あるいはリウマトイド因子の陽性率はMTX単独に比べて有意に低いことが分かった。  


松井氏は,MTX以外の“csDMARDs単独でも十分対応できる”患者が存在する可能性を指摘。「MTXを使用できない患者や高齢患者の治療アルゴリズムを考えるべき」と述べた 。

                                 





この報告は、市中病院で関節リウマチ診療をしている者としての感覚にほぼ合致しています。やはり80歳を越える高齢者にMTXを処方することは心理的にも憚られます。


80歳を越える高齢者に対して、私は消去法的にサラゾスルファピリジン(SASP)を処方することが多いです。個人的にはブシラミンは過去の薬というイメージが強いので処方しません。


タクロリムスはそこそこ有効な印象ですが、薬価が高いため患者さんの評判が悪いです。薬価と効果の兼ね合いで、そこそこのバランスが取れているSASPを選択することが多いです。


報告の最後に、抗CCP抗体陽性率がMTX群に比べて優位に低いとのことですが、抗CCP抗体が低いのであれば、無理してMTXを使用するのはやめておこうという気持ちがあるのでしょう。


高齢の関節リウマチ患者さんは、合併症併発リスクが高いため恐々と治療を行っています。松井先生がおっしゃられるように、高齢関節リウマチ患者さんの治療指針を作成して欲しいものです。



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