昨夜は当直でした。近所の老健施設から、入所中の80歳台の方がベットからずり落ちてから腰を痛がっているので診て欲しいという依頼があったので、二つ返事で診察を引き受けました。
患者さんの診察すると胸腰移行部に脊椎叩打痛があり、圧迫骨折である可能性が濃厚です。そこで単純X線を施行しようとしたときに問題が発生しました。
施設の職員の方が、「患者さんには腹部大動脈瘤の既往があるため、ご家族がCTで腹部大動脈瘤の精査も行ってもらうことを強く希望されています!」とおっしゃられるのです・・・。
臨床的には明らかに胸腰移行部の圧迫骨折の可能性が濃厚なのですが、腹部大動脈瘤(AAA)による腰痛である可能性も全くゼロではないはずです。
あいにく心臓血管外科が無い病院なので、腹部大動脈瘤の質的評価を正確に下せる医師が居ません。この状況で専門外の診察・治療を引き受けることは非常にリスクが高いと思いました。
更に、大動脈瘤は医師泣かせのやっかいな疾患で、もし入院中に破裂して不幸な転帰を辿れば高率に訴えられ敗訴します。個人的には最もトラブルの多い疾患のひとつという認識です。
このようなことを総合的に考慮した結果、やはり心臓血管外科医の居ない施設でこの方を受け入れることは難しいと判断して、速やかに他院を受診していただくことになりました。
腹部大動脈瘤破裂などの発生したときのダメージが致命的な疾患がときどきあるので、医師は常にアンテナを張ってトラブルに巻き込まれないように心掛ける必要があると思いました。
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整形外科研修ノート (研修ノートシリーズ)
心臓血管外科
Medical Tribune (2013.1.10)で、「一流の心臓外科医になるための条件とは」 という対談記事がありました。
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須磨ハートクリニック院長 須磨久善先生と順天堂大学心臓血管外科教授 天野篤先生の対談です。
・ 心臓血管外科医の場合、その施設での手術件数が年間150-180例程度が若い医師のトレーニングに適した症例数である
・ それ以上の症例数ではその場限りで、処理しきれないとのことです
・ 天野先生が30歳のころは、大学内でいつになったら執刀できるのか、全く約束事はなかったそうです
・ 天野先生は手術オンリーに特化していて、患者さんとのコミュニケーションや患者管理は若手医師に任せています
・ そうしたことがきちんとできて手術の中でも何かを獲得しようと努力している人や、患者さんの機能や術後の予後を少しでも良くしようという姿勢が見える人にチャンスを与えるそうです
・ 基本的に外科医はアスリートなので体力を付けておくことは必須条件である
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やはり、心臓血管外科は厳しい科ですね。やる気はもちろんですが、ある程度運がないと一流の外科医になれるチャンスが少ないように思えます。
不謹慎ですが、整形外科医を選んで良かったなと感じました。
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