先日の週末に勤務先の病院に出勤すると、病棟から整形外科で入院中の60歳台の患者さんが急変したという連絡がありました。朝の看護師訪床時に意識レベルが低下していたのです。


半身が全く動かなかったので当直医が頭部CTを施行しましたが明らかな出血を認めません。こうなると急性期の脳梗塞が疑われます。MRIを施行すると右側に大きな梗塞巣がありました。



基礎疾患に未治療のAfがあります。おそらくこれが脳梗塞の原因でしょう。この場合、どのような対応をすれば良いのでしょうか?あいにく、勤務先に神経内科や脳神経外科医は居ません。


主幹動脈の閉塞による脳梗塞治療法の第一選択は、t-PAの経静脈的投与ですが、発症4.5時間以内に治療を開始しなくてはならない制約があります。


今回は最大で10時間ぐらい経過している可能性があります。t-PA適応外の急性期脳梗塞患者さんの治療手段として脳血管内治療があり、発症後8時間以内の患者さんが対象となります。


脳血管内治療は、具体的に下記の4種類があります。

  1. カテーテルを閉塞した血管に導入して血栓溶解剤を投与する方法(局所血栓溶解療法) 
  2. バルーンを閉塞した血管に留置してバルーンで血栓を破壊する方法(血栓破砕による脳血管再開通療法) 
  3. 血栓をからめとって回収する方法(血栓回収療法)
  4. 血栓を吸引する方法(血栓回収療法)


実は私の大学時代の部活の2年先輩が、この脳血管内治療のスペシャリストです。ときどき一緒に飲むのですが、「適応患者さんが居たらすぐに送ってこい!」といつもおっしゃれています。



そこで私は、週末で病院は休みにも関わらず、馬鹿正直に先輩医師の個人携帯に電話しました。最初はちょっと眠そうな感じでしたが、30分以内に転院させろ!と指示されました。

 

発症後8時間以内なので、とにかく時間との戦いなのです。転院にはいろいろな書類や手続きが必要ですが、ある程度すっ飛ばして、とにかく先輩の居る病院に転送しました。


当日はほとんど動かなかった半肢も翌日から徐々に動くようになり、現在は歩行練習中です。何とか発症後8時間以内に間にあったようです。



このように血管関連の疾患では、時間との戦いです。今回は偶然私の個人的なつながりが奏功しましたが、普段からイベント発生時の対応を整備しておく必要がありそうです。





★★★  管理人 お勧めの医学書  ★★★

整形外科を志すなら、キャンベル(Campbell's Operative Orthopaedics)は必須でしょう。ペーパー版以外にも、DVDやe-ditionもあって便利です。更にKindle版は約30% OFFで購入可能です。このような辞書的な医学書は、電子書籍と相性が良いと思います。