先日、開業医のアルバイト先で夜診をしていた際に30歳台後半の方が受診されました。
この方は、昨日からの急激な後頚部痛を主訴に、当日の午前に外来受診されていました。


午前中はクリニックの院長先生が診察されたようですが、あまりに急激かつ症状が激烈なので緊急の頚椎MRIを外注されました。その結果説明で再診されたのです。


午前中のCRP/WBCは0.8/7000程度で、発熱はありませんでした。頚椎MRIでは脂肪抑制画像で
C2~4の頚椎椎体前方に高輝度領域認めました。


単純X線像では明らかな石灰化を認めませんでしたが、熱発が無いことやCRP,WBCなどの炎症反応の上昇が軽度であることから急性石灰沈着性頸長筋腱炎と診断しました。


急性石灰沈着性頸長筋腱炎の鑑別診断には咽後膿瘍があります。咽後膿瘍は緊急性のある疾患で、放置すると気道閉鎖を併発することがあります。


この方に嚥下障害や嚥下時痛はなく、呼吸状態も正常でした。後で調べてみると、急性石灰沈着性頸長筋腱炎と咽後膿瘍の鑑別診断には造影CTが必要だそうです。


咽後膿瘍では、椎体前面の低吸収域の周囲に明瞭な造影効果を認めます。基本的には造影CTの画像診断で、咽後膿瘍に対するドレナージの適応を判断します。


今回、初めて急性石灰沈着性頸長筋腱炎を診ましたが、疼痛の訴えが半端ではありませんでした。一度診たら忘れられませんが、次は咽後膿瘍との鑑別診断もしっかり診たいと思います。



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Critical thinking脊椎外科