整形外科医のブログ

投資の成功によって30歳代で経済的自由を達成しました。 医師起業家として年商10億円企業を目指して日々奮闘中

感染

人工関節感染制圧のための3つのポイント

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先日、MSSAによる THA後の感染を経験しました。術後1ヵ月以内に併発したので、急性期に分類されると思います。


思い切って一期的に掻爬洗浄術+再置換術を施行したところ、なんとか感染を制御することができて無事に退院されました。


今回の症例でいろいろ勉強しましたが、一期的に感染を鎮静化できた因子は下記のようなことかなと思っています。


  1. 交換可能なインプラントは思い切って交換した
  2. 抜去しないインプラントは清潔歯ブラシで徹底的に表面をこすりまくった
  3. 早期からリファンピシンを併用した


①②はもちろんバイオフィルム対策です。本来なら全てのインプラントを抜去することが感染制御には望ましいですが、セメントレスではそういう訳にもいきません。


このため、交換できる部分を交換したうえで、交換できないインプラントの表面に生着した細菌のバイオフィルムを除去することが治療の主眼になります。


インプラント表面のバイオフィルムを物理的に除去するために、歯ブラシでインプラント表面を徹底的にこすりまくったのです。


③のリファンピシンも、実はバイオフィルム対策です。
リファンピシンはバイオフィルムを通過することで高い細胞内活性を示して殺菌的に働きます。


こうしてみると、人工関節全置換術感染において感染制圧のポイントはバイオフィルム対策であることが良く分かります。


もちろん、今回は私個人の小経験なので、事実と全く異なる可能性はあります。しかし、上記で挙げた3つの手法は論文でも取り上げられており、かなり効果がある印象でした。






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THAも関節注射後3ヵ月は待機しよう!

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先日ご紹介したのは、術後感染率が有意に上昇するので TKA の術前3ヶ月以内に関節注射を施行するべきではないという論文でした。


それでは THA に関してはどのような状況なのでしょうか? 実は、人工股関節全置換術(THA )にも似たような研究があります。


またまた出身大学の講師の先生に教えていただたのですが、下記のような2つの論文があります。




The Timing of Total Hip Arthroplasty After Intraarticular Hip InjectionAffects Postoperative Infection Risk



Preoperative Hip Injections Increase the Rate of PeriprostheticInfection After Total Hip Arthroplasty




いずれも TKA と同様に、術前 3ヶ月以内の関節注射は有意に術後感染率を高めるという結果です。THA においても、術前3ヶ月以内の関節注射は避けるべきのようです。


股関節に関しては、日本ではヒアルロン酸の関節注射が
保険適用ではないため、膝関節のように定期的に関節注射をすることはないです。


しかし腰椎由来の痛みとの鑑別のためにキシロカインテストをすることはあります。もちろん、キシロカインテストも関節注射です。


このため、キシロカインテスト陽性だったので手術をしましょう! ではなく、手術はキシロカインテストを施行してから3ヵ月以上待機することが望ましいでしょう。





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TKA: 術前3カ月以内の関注は危険!

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変形性膝関節症の治療において、人工膝関節全置換術(TKA)は最後の手段です。膝関節注射の効果がいよいよ見込めなくなった段階で手術を考えるという流れが多いと思います。


このようなケースでは、最後の関節注射をした後に患者さんが音を上げて人工膝関節全置換術を希望して手術治療へシフトすることになります。


しかし、主治医が「はい、わかりました。それでは手術をしましょう
」と言うと少しマズいことになります。どういうことかと言うと、JBJSから下記の論文が出ているからです。



Comparison of Infection Risk with Corticosteroid or Hyaluronic Acid Injection Prior to Total Knee Arthroplasty



上記論文は大学の先生に教えていただきました。この論文によると、TKA の術前 3ヶ月以内に
関節注射を施行した症例では、有意に術後感染が増えるという結果になっています。


このため外来で関節注射を施行していて、いよいよ手術しかないということになっても、最後の関節注射から手術までの機関は、少なくとも3ヶ月以上空けた方が良さそうです。






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感染人工股関節でのリストリクター

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感染した人工股関節や人工骨頭を最置換する際は、普段セメントレスステムを使用している医師であってもセメントステムを選択することが多いと思います。


セメントステムを使用する際にはセメントリストリクターを使用しますが、感染症例では市販のセメントリストリクターを使用するのは何となく気持ち悪いものです。


そこで何か良い方法はないかと思って、経験豊富な何名かの医師に質問してみました。その中で出た案は下記のごとくです。


  1.  2セメント(抗生剤含有)
  2.  同種骨+抗生剤
  3.  人工骨(β-TCP)+抗生剤



2セメントテクニック


まず抗生剤含有セメントをステム先端付近の髄腔内に充填する。硬化したのちに本番のセメントを充填してステムを挿入する。


ただ、
セメントがたれてしまってリストラクターとしての用をなさなかったり、近位までセメントが入ってステムが入らなくなるトラブルが発生しやすいとのことです。



同種骨+抗生剤


某旧帝国大学では、チップにした同種骨をガーゼで茶巾様に包んで、生食500ml+セファゾリン 2g に1時間浸しておくそうです。


こうすると同種骨に抗生剤が浸軟して徐放効果も期待でき、確実なリストラトも得られるとのことです。なるほどですね!



人工骨(β-TCP)+抗生剤


こちらは上記(同種骨+抗生剤)の亜型です。同種骨を利用できるのは大学や大規模基幹病院であり、普通の市中病院ではなかなか難しいのが現状です。


市中病院では同種骨の代わりに人工骨を使えばよいと思います。気孔率の高い β-TCP を選択します。気孔率が低いと、髄内でうまく砕けないので注意が必要です。








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手洗い水は水道水が吉!

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手術部位感染(SSI)に関連して、手術室で使用する手洗い水をどうするかという議論があります。昔は滅菌水がメジャーでしたが、最近では水道水使用派が台頭しています。


平成17年に医療法施行規則が改正され、「滅菌手洗い」が「清潔な手洗い」という文言に改められました。この改正で、手洗いにおける水道水の使用が認められるようになりました。


手洗いに使用する水は、外国では水道水を用いるのが一般的です。しかし、我が国では医療法施行規則で滅菌水使用が明記されていたため、滅菌水を使用せざるを得ませんでした。


では、実際にどちらの方がより安全なのでしょうか? 私の感覚では、水道水は塩素を含んでいるため、滅菌水よりも微生物汚染を回避できる可能性が高いです。


私の家には井戸があり、トイレや庭の散水は井戸水を使用しています。昔ながらのポンプ式井戸で、塩素を付加する装置は付けていません。


そして、夏場になると井戸水が結構臭うんです。。。当初は洗濯も井戸水を使用していましたが、あまりに臭うため水道水に変更しました。


この点、微量の塩素が含まれる水道水は、ほとんど臭うことがありません。ほぼ同じ部位に配管があるのですが、その圧倒的な清潔度の違いに、塩素の偉大さを感じました。


この経験から、手術室の手洗い水も、滅菌水よりも水道水の方が望ましいと感じるようになりました。たしかに滅菌した瞬間は清潔でしょうが、配管が清潔か否かは怪しいものです。


まだまだ滅菌水使用の施設が多いと思います。「滅菌水」というネーミングにだまされることなく、きちんとした設備管理の実施が重要だと思いました。





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