先日、MSSAによる THA後の感染を経験しました。術後1ヵ月以内に併発したので、急性期に分類されると思います。
思い切って一期的に掻爬洗浄術+再置換術を施行したところ、なんとか感染を制御することができて無事に退院されました。
今回の症例でいろいろ勉強しましたが、一期的に感染を鎮静化できた因子は下記のようなことかなと思っています。
- 交換可能なインプラントは思い切って交換した
- 抜去しないインプラントは清潔歯ブラシで徹底的に表面をこすりまくった
- 早期からリファンピシンを併用した
①②はもちろんバイオフィルム対策です。本来なら全てのインプラントを抜去することが感染制御には望ましいですが、セメントレスではそういう訳にもいきません。
このため、交換できる部分を交換したうえで、交換できないインプラントの表面に生着した細菌のバイオフィルムを除去することが治療の主眼になります。
インプラント表面のバイオフィルムを物理的に除去するために、歯ブラシでインプラント表面を徹底的にこすりまくったのです。
③のリファンピシンも、実はバイオフィルム対策です。リファンピシンはバイオフィルムを通過することで高い細胞内活性を示して殺菌的に働きます。
こうしてみると、人工関節全置換術感染において感染制圧のポイントはバイオフィルム対策であることが良く分かります。
もちろん、今回は私個人の小経験なので、事実と全く異なる可能性はあります。しかし、上記で挙げた3つの手法は論文でも取り上げられており、かなり効果がある印象でした。