先日の外来で、2日前から誘因無く発症した股関節部痛を主訴にした方が初診されました。
特に外傷の既往は無いとのことですが、70歳台だったので骨折を第一に疑いました。


身体所見的には明らかに股関節由来の痛みのようなのですが、単純X線像では明らかな骨折を認めませんでした。???と思って診察台に寝てもらうと、股関節の伸展制限がありました。


う~ん、これはいわゆるpsoas positionです・・・。そのまま血液生化学検査と下腹部CTを施行したところ、患側の腸腰筋の腫脹を認めました。


WBCは正常上限ですが、CRP・ESRとも軽度上昇しています。状況判断的に腸腰筋膿瘍と診断しました。まだ発症して2日なので腸腰筋の腫れ方もさほどではありません。


感染症治療では起因菌の同定が重要です。腸腰筋膿瘍ではCTガイド下での腸腰筋穿刺およびドレナージが必須です。しかし通常、腸腰筋膿瘍が単独で発症することはあまりありません。


更に問診すると、20年以上前に弁膜症で弁置換術を施行していることが判明しました。おそらく感染性心内膜炎に起因する腸腰筋膿瘍と予測されます。


残念ながら、私が勤務する病院では心臓血管外科が無いので感染性心内膜炎への対応が困難です。やむを得ず心臓血管外科のある近隣の総合病院に紹介しました。


バタバタと外来中に総合病院への紹介まで含めて全てが完結しましたが、やはり身体所見(今回はpsoas position)が重要であることを改めて認識しました。



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                       股関節学