週刊ダイヤモンドの2016/12/31・2017/1/7新年合併号に興味深い記事がありました。医学ライターの井出ゆきえ氏による「子供の感染性急性胃腸炎に」です。


私は、このコラムを毎週楽しみに拝読しています。さまざまな医療分野の実践的な記事を読むことができるからです。今回は、ノロウイルスなどの感染性胃腸炎に関する記事でした。


感染性胃腸炎には抗ウイルス薬がないので、嘔吐や下痢に対応する「対症療法」しかありません。子供や高齢者は脱水症状に陥りやすいため、家庭での経口補水療法(ORT)が重要です。


ORTは、欧米では一般的に行われており、日本でも普及の兆しが見えてきました。補水液を口から飲ませるシンプルな方法ですが、軽~中等度の脱水なら点滴に匹敵する効果があります。


ORT用の補水液は、ナトリウムやカリウムなどの電解質と糖質が主要成分です。いわゆるスポーツドリンクとは、電解質・糖質の構成比が異なります。


ORT用の補水液では、傷んだ腸管から水分とナトリウムが吸収されやすいように調整されています。薬局やスーパーなどで、明治アクアサポート と オーエスワン(OS-1) が販売されています。





下痢や嘔吐があると「何も口に入れない方が楽なのでは?」と思いがちですが、脱水予防には下痢や嘔吐症状が出た時点で、「即、ORTが正解」だそうです。発症後4時間以内が理想です。


ただし、一度に大量に飲ませると嘔吐がひどくなるので、1回5mL(ペットボトルのキャップ1杯分)を5分毎に飲ませると良いそうです。1回5mLでも、1時間続ければ60mLの水分を補給できます。


もうひとつ重要なのは、ORTと併せて「普通の食事」を与えることです。絶食期間が長引くと、腸の表面が萎縮して栄養を吸収できず回復が遅くなります。おかゆだけではなく肉や魚もOKです。


なるほど、これは高齢者の入院患者さんにも応用できそうです。ちなみに、ノロウイルスは体外に排出された数週間後も感染力があります。吐瀉物の取り扱いには十分に注意しましょう。





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