昨日の午前中はアルバイト先で外来をしていました。
旅行で長距離を歩いてから膝痛が治らないという20歳台の女性が初診しました。
診察すると内側谷に索状物を触知して圧痛もあります。
関節水腫は無く、単純X線像上も明らかな異常所見を認めません。
診断は、もちろん膝関節のタナ障害です。MRIの冠状断で肥厚したタナの存在を
確認できますが、触診だけでほぼ診断はつくと思います。
今回はスポーツが原因ではなく、一過性の膝関節への過負荷が原因なので、
まずは安静と消炎鎮痛剤の処方としました。
スポーツが原因の場合には、日常的な膝関節への過負荷が原因なので
消炎鎮痛剤だけではなかなか治癒しない印象があります。
このような場合には、ステロイドを混注した関節腔内注射が効果的であるケースが多いと思います。ステロイドは懸濁性の方がよく効きますが、若年者が多いため私は水溶性を選択します。
ステロイドを混注した関節腔内注射を施行しても痛みが収まらない場合には、鏡視下タナ切除術の適応ですが、幸い私はそこまで重度なタナ障害を経験したことはありません。
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懸濁性ステロイド
先日、大学の手の外科医師とお話をする機会がありました。
その話の中で、ステロイド製剤は何を使用しているのかが話題になりました。
ご存知のようにステロイド製剤には水溶性と懸濁性があります。水溶性ステロイドは成分が水に溶けてる状態なので、体内への吸収が良好ですぐに排泄されます。
水溶性ステロイドは、ベタメゾンやデキサメサゾンなど力価の強いステロイドが使われていますが、患部に留まる時間が短いため緩やかな効果となります。
一方、懸濁性ステロイドは成分が水に溶けずに結晶の状態で混入しているので液が濁って見えます。 結晶なので体内に吸収されにくく、患部に長く留まって効果が持続します。
成分であるメチルプレドニゾロンやトリアムシノロンなどは、水溶性ステロイドよりも力価は弱いですが、体内での残留時間が長いため効果が水溶性を上回ります。
このような理由で懸濁性ステロイドを好んで使用するケースがありますが、体内に残留するので組織の癒着が激しくなるため、あまり推奨できないとのことでした。
確かに頻回に懸濁性ステロイドを関節腔内注射された患者さんの膝関節内を鏡視すると、結晶成分が関節内に溢れており、本当に大丈夫なのか?と思ってしまいます。
このような理由からステロイド製剤を使用する際には、できるだけ懸濁性ステロイドは控えて水溶性ステロイドを選択する方が無難かなと思いました。
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