先日、交通事故患者さんで面倒な方が受診されました。外傷性頚部症候群なのですが主訴がやたらと多いです。もちろん、神経学的・画像的異常所見を認めません。
この方の何が面倒かと言うと、診断書記載内容についての細かいリクエストが高度なのです。特に病名についてしつこく、ずけずけと他の患者さん診察中に乱入します。
果てには診てもいない腰椎捻挫も病名に追加しろ!と言い出す始末です。あなた、腰が痛いと診察中に言いましたっけ?
目的ははっきりしており、本人自ら「接骨院から病名をたくさん記載した診断書をもらってこいと言われた」とおっしゃられます。ナルホド、いわゆる部位稼ぎですね...。
周知のように、交通事故であっても、医家の診断名以外の部位を勝手に施術してもコストを取れません。このため、接骨院は患者さんを通じて多数の診断名を要求するのです。
私は接骨院経営者に仲の良い友人がいるので、基本的に接骨院拒絶派ではありません。ただ内情を熟知しているだけに患者を利用した露骨な利益収奪に嫌悪感を感じざるを得ません。
患者の意図は「治りたい」であり「部位数を稼いで接骨院に利益を献上したい」ではないので、医師法の診断書発行義務も鑑みて、応じることができる部分は対応しました。
ここまで酷い患者さんや接骨院は滅多にみないですが、昔よりも着実に増加している印象を抱いています。医師法の診断書発行義務を逆手に取った新手の利益収奪法ですね。
接骨院
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先日、同門の重鎮の先生に御馳走になりました。私の立場から見ると雲の上のような存在の方なので、どんな話題になるのか興味津々でした。
参加者は6名だったのですが、医療も含めていろいろな話題が出てきました。その中で接骨院についての話題に及びました。
周知のように整形外科医と接骨院は犬猿の仲(?)です。接骨院に対して苦々しく思っている整形外科医は多いと思います。
かく言う私も当初は接骨院にあまり良い感情は抱いていませんでした。素人が何を言っているんだと・・・
しかし、接骨院経営者との飲み会に何度か参加してから考え方が変わりました。彼らの中にも真面目に取り組んでいる人がたくさん居ることに気付いたのです。
もちろん、施術士間の実力差は大きいのですが、技量の高い人は侮れないのです。それは自費でも一定数の支持を得ていることからも垣間見れます。
そのようなことを日々感じているのですが、驚いたことに当日の参加者の半数が私と同意見でした。そして、一般的には考えにくいのですが、接骨院と積極的に連携しているのです!
かくいう私も実力者とは積極的に患者さんの紹介をし合っています。整形外科医側にもメリットは多く、手術適応患者さんの紹介を受けることも多いです。
接骨院を毛嫌いすることなく、本当に実力のある施術士とは連携することでお互い良い関係になるのではないかと、その日の出席者の半数は感じていたのです。
このことは驚くべきことだと思います。整形外科医の中では接骨院と連携するなど、半ばタブー視されていますから...。
しかし、お互いの武器は異なるので、足りない所は補強し合うのが患者さんの役に立つのではないかと感じています。同じ考えの医師が居ることを知って少し安心しました。
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今日は、接骨院関連の話題です。
先日、多店舗展開している接骨院オーナーとお話する機会がありました。
接骨院の置かれている状況はこちらでご説明しました。平成29年4月から柔道整復療養費審査委員会の審査要領が改正されて実行に移されています。
事前予想ほどには劇的な変化は無いようですが、やはり徐々に悪影響が出ているとのことです。そして、10月1日付けで厚労省から下記のような通達が出ました。
- 月10回以上、3ヵ月以上、多部位(3か所以上)は調査する
- 上記患者が10名以上いる接骨院には監査が入る
接骨院では、私たちの医療業界とは異なり、カルテを記載していない施設も多いとのことです。こういったところは論外ですが、厚労省はカルテを鼻から信用していないそうです。
このため、カルテに記載していても、上記に該当する場合にはビシバシ監査に入るという「脅迫」が行なわれました。
先日もお話しましたが、私は接骨院に対してニュートラルです。むしろ、私たちの医療業界の「炭鉱のカナリヤ」と見なしてるため、その動向にかなり注目しています。
接骨院業界に起こっていることは、数年後の医療業界の姿だと思います。その視点で観察すると、接骨院の自費割合の高さが光ります。
保険診療に依存せずに自費診療がメインの整形外科クリニックはほぼ皆無だと思います。しかし、接骨院では世知辛い保険診療から離脱しつつある施設が多いです。
それほど保険診療の締め付けが厳しくなってきた証左ですが、逞しく生き残っている姿は賞賛に値します。果たして彼らと同じ状況に追いやられた時に私たちは生き残れるのか?
キーワードは自費だそうです。いかにして自費でも来てくれる患者さんを取り込むのかが大きな経営テーマとなっています。
特に整形外科開業医の先生方は、彼らの対応をつぶさに観察しておくべきでしょう。おそらく数年後の自分たちの姿を見ているのですから・・・
先日の接骨院の話題は、予想外にアクセス数が多かったです。私は、いくつかのルートから4月以降の接骨院の苦境を聞いていましたが、医師の間では知られていなかったのでしょう。
実は先日のことですが、接骨院関連のセミナーに現役整形外科医として登壇する機会がありました。その際に、柔整師の方とお話しをして感じることがあったのでご報告します。
まず、柔整師の皆さまは非常に実直で真面目な方が多い印象でした。まぁ、そのような方がセミナーに参加されるというバイアスはあると思いますが、なかなか好印象でした。
現在の接骨院の置かれている問題として、下記の2つが挙げられます。
- 柔整師数の急増による需給関係の崩壊
- 受領委任払い制度に対する規制強化
①②とも、末端の接骨院レベルでは如何とも対処し難い問題です。①は今後数十年に渡って続きます。歯科医や弁護士もそうですが、一度崩れた需給関係は修復不能です。
②は、現在4000億円規模の柔道整復療養費が、受領委任払い制度の是正化によって、3000億円規模に縮小すると言われています。
もともと利益率の低い業界なので、売上が3/4になると耐えきれなくなる治療院が続出することが予想されています。この状況にどうやって立ち向かっていくのか?
そのひとつの解が、自費療養を推進することのようです。治療院のスポーツクラブ化を推進するところが、ポツポツと出始めているようです。
確かに、歯止めのかからない医療財政の悪化を鑑みると、この方向しか生き残る道は無さそうです。涙ぐましい努力を拝聴していると、これは他山の石かもしれないと気付きました。
もしかすると、我々の業界に訪れる苦境を10年ほど先取りして接骨院業界が経験しているのかもしれません。。。
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柔道整復療養費審査委員会の審査要領が改正されました。今回の改正案は、平成29年4月から実行に移されています。具体的には、下記の事項を重点的に審査しています。
- 多部位
- 長期又は頻度が高い施術
①は、同一施術所における同一患者の負傷と治癒等を繰り返す施術、いわゆる「部位転がし」です。②は、同一施術所における同一患者に対する月10回以上の施術です。
これらは、昔から柔道整復師業界で行われていた受領委任払い制度の欠陥を突いた不正請求の代表例ですが、ついに厚生労働省と会計検査院が、是正に本腰を入れ始めました。
その影響は劇的で、今後1/2~1/3の治療院が廃業することになろだろうと言われています。まさに受領委任払い制度によるビジネスモデルが崩壊しようとしているのです。
整形外科医の多くは、冷ややかな目を注いでいるでしょう。確かに、これまでの状況は異常で、国民の大切な財産である医療費が、ほとんど野放しのまま食い荒らされていました。
このため、状況の適正化は望ましいことであると考えています。ただ、私は一般整形外科医と同じ観点から、この劇的な変化を眺めているわけではありません。
正直に言うと、私は柔道整復師および治療院に対してニュートラルな立場です。もちろん、酷い治療レベルの柔道整復師や、不正請求に関しては苦々しく思っています。
しかし、柔道整復師の全員がそうではなく、彼らの多くは真面目に仕事をしています。特に整形外科医が取りこぼしている患者さんを救っているのは、彼らであることが多いのです。
昔に所有していた物件のテナントで、治療院が盛業していました。その関係もあり、何度か治療院を訪れたのですが、なかなか良い仕事をしています。
そんな彼らの業界は、存亡の危機に瀕しています。受領委任払い制度によるビジネスモデルの崩壊が静かに(?)進行しているのです。慎重に状況の推移を見守りたいと思います。
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