整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

整形外科

陳旧性(?)小児肘内障には要注意!


先日、近所の整形外科開業医から2歳児の診察依頼がありました。
前日、父親に左手を引っ張られてから動かさなくなったとのことです。


そして、当日の午前にその整形外科開業医を受診したのですが、肘内障の整復操作をしてもはっきりとした整復感を得ることができなかったようです。


当院初診時に、患児はある程度左肘を動かしていますが、まだ痛みが残存しているようです。両肘関節に視診上での差異が無いことを確認した上で、小児肘内障の整復操作を施行しました。


何度か繰り返すと、ようやく鈍いクリックを触知しましたがいつもと様子が違います。う~ん、何かおかしい・・・。念のため、もう少し継続すると今度は比較的はっきりしたクリックを触知しました。



城東整形外科の皆川先生の論文にもありましたが、一度肘内障を発症すると輪状靭帯や周囲の軟部組織が腫脹するそうです。


数時間以内に整復されている通常例でも軟部組織が腫脹するぐらいなので、1日経過したものでは相当輪状靭帯周囲が腫脹しているものと推察されます。


このためなかなか輪状靭帯が整復されず、整復操作も一度で完全には成功しなかったのでしょう。診断も含めて1日以上経過している小児肘内障は要注意だなと感じました。




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交通事故患者さんと医師の最適解は?


交通事故で整形外科外来を受診する患者さんは多いです。
しかし、外傷性頚部症候群の患者さんを診ることが嬉しい勤務医はあまり居ないと思います。


主観的な症状ばかりで、客観的な所見に乏しい患者さんがほとんどです。このため、詐病を疑うまではいかないものの、勤務医の立場からはちょっと勘弁してほしいと思ってしまいがちです。


勤務医の立場からは、受傷後1週間ぐらい経過しても明らかな神経学的異常所見や外傷の所見が無い患者さんは、できるだけ通院しないように仕向けるのが最適解です。


一方、交通事故患者さんの立場は全く異なります。自賠責や任意保険の入通院慰謝料には、通院期間および通院回数が大きな影響を及ぼします。特に通院回数は週2回以上が理想的です。


交通事故の患者さんが前回受診日から数日しか経過していないのに再診することがよくありますが、その理由はこの入通院慰謝料を考慮しての行動なのです。


私たちの立場では、症状が変わらないのに2日毎に受診されてはたまったものではありません。もちろん、患者さんも医師の厳しい視線を感じるので、2日毎に受診し続ける強者は少ないです。
 


しかし、充分な金額の入通院慰謝料を確保するためには、ある程度の通院回数が必須です。この結果として医師に顔を合わすことの無い物療に流れる患者さんが後を絶ちません。


このことが、交通事故患者さんが判で押したように物療を希望する理由です。更に交通事故患者を飯のタネにしている接骨院へ流れる患者さんが多いのも、このことが理由です。


何といっても、病院はできるだけ患者さんが再診しないように仕向ける一方で、接骨院は集患に熱心なので、交通事故患者さんが接骨院に流れるのは必定です。


しかし、ここで交通事故患者さんにとって大きな問題点が持ち上がります。後遺症診断書を作成できるのは医師だけなので、途中で接骨院に行っていた患者さんは極めて不利になります。


接骨院としては、通院回数を稼いだ後の交通事故患者さんのことなど知ったことではありません。一方、途中経過が全く不明な患者さんの後遺症診断書を作成するのは迷惑な話です。


医師も人間なので、このような患者さんとできるだけ関わらないようにします。このため、後遺症診断書作成を引き受ける場合でも、内容がシンプルで損保側を資する診断書になりがちです。


このように考えると、入通院慰謝料に目が眩んで接骨院に流れる行為は、より金額の大きな後遺障害慰謝料を捨ててしまう馬鹿げた行為ということになります。


では、もし自分が交通事故患者さんになったらどうすればよいかを考えてみました。私なら物療のある、比較的流行っていない開業医に通院すると思います。


さらに開業医の先生と仲良くなれば、後遺症診断書作成時にも何らかの便宜を図ってもらえるかもしれません。このように考えると、交通事故の最適解は開業医通院ということになりそうです。




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自治医科大学准教授の星地先生の経験・知識を余すところなく収めたサブテキストです。定番と言われている教科書に記載されている内容は素直に信じてしまいがちですが、実臨床との”ズレ”を感じることがときどきあります。このような臨床家として感じる、「一体何が重要なのか」「何がわかっていないのか」「ツボは何なのか」を自らの経験に基づいて完結に述べられています。








                        

リハビリテーション目標の寸止め


大腿骨近位部骨折患者さんの術後リハビリテーションの目標設定は難しいことがあります。
骨折した高齢患者さんは、認知症を併発していることが多いからです。


目標設定が難しくなる理由は、認知症のためにうまく訓練できないためだけではありません。むしろ、家族や退院後の施設の要望で、リハビリテーションを中止することがあります。  


例えば徘徊する認知症患者さんの歩行能力を上げてしまうと、退院後の介護が非常に大変になるケースがあります。ちょっと目を離すとすぐに動き出すので転倒リスクも高まります。


高度の認知症患者さんでは、介護しているご家族から敢えて車椅子移乗レベルよりも上は目指さないで欲しい旨の要望をいただくことが多いです。


医療者としては、リハビリテーションでベストの身体能力を再獲得して欲しい。しかし、身体能力が向上すればするほど介護が難しくなる現実があります。これは、なかなか切実な問題です。


最初の頃は、私はこのような家族の意向に反感を抱いたものです。家族の都合で患者さんのADLを敢えて低いままにするとは何事だと・・・ 


御家族のことを何も分かっていない素人意見ですね。世間知らずとはまさにこのことです。介護という先の見えない戦いをしている御家族の状況が分かっていませんでした。


しかも、その戦いは、今日よりは明日の方が悪くなるという退却戦なのです。子育てのように今日よりも明日の方が成長していく状況とは全く真逆な状況です。


このような状況を理解すると、必然的に御家族の意向を尊重せざるを得ません。そして、この決断は、再骨折を防ぐという意味で、往々にして患者さんご本人のためにもなります。


全力で医療資源を投入して患者さんを回復させれば良いわけでもないのが、リハビリテーションの難しいところですね。コミュニケーションを密にとって御家族の意向を汲むことが重要です。




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ピットフォール: 計測法の違い


先日、大腿骨転子部骨折に対して、普段とは違うメーカーの内固定材料を使用しました。
使用したのはショートネイル型の内固定材料で、外観上は各社の違いがほとんどありません。


使用感もほとんど同じなのですが、本当に微妙なところで各社の違いがあります。私が最も注意しているのは下記の点です。


  1. ラグスクリュー長は、実際にはどこからどこまでの長さなのか
  2. ディスタルスクリュー長は、実際にはどこからどこまでの長さなのか
  3. ディスタルスクリューは計測値ぴったりの長さのスクリューを推奨しているのか
  4. デプスゲージの使用法


①のラグスクリューの長さは、尾側の形状の違いで長さの定義が微妙に異なります。実際はどこの長さを測っているのかと、メーカー推奨はどこまで挿入するのかを確認する必要があります。


②はスクリュー先端の形状の違いで長さの定義が微妙に異なります。特に③と関連して計測値通りのスクリューか、ワンサイズ長いスクリューを選択するべきなのかを確認しておくべきです。


④はデプスゲージの形状によって各社異なります。特にスリーブ端で計測する場合には、内筒を抜いてから外筒を大腿骨外側皮質に密着させる必要があるので注意が必要です。


総じて言うと、最近の内固定材料は過剰なまでにユーザーフレンドリーを志向しているため、かえって使いにくいモノが多い印象です。


開発者の気持ちになれば、できるだけ術者が要らないことを考えずに手術できるように気を使っていることが分かります。そして1種類だけ使用し続けるのであれば問題は発生しないでしょう。


しかし、実臨床では何種類かの内固定材料を使い分けることが多々あります。その場合には、ユーザーフレンドリー過ぎる内固定材料はかえって混乱をきたす原因となります。


私個人の嗜好は「シンプルな器械」です。多少使いにくくてもきっちりと長さが測れて、計測通りのサイズのスクリューを挿入すればOKなモノが、最もストレスが無いので好きです。






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膝蓋骨脱臼で伸展位固定する理由


先日、10歳女児が初回の膝蓋骨脱臼で初診しました。
転倒しそうになって踏ん張った際に脱臼したようです。


膝蓋骨内側に軽度の腫脹・圧痛を認めましたが、来院時には自然整復されていました。単純X線像を確認すると、大腿骨膝蓋骨溝の低形成が著明でした。


joint laxityはさほど無かったので、大腿骨顆部の低形成が膝蓋骨脱臼の原因と考えました。画像的には習慣性脱臼に移行しやすそうな印象です。


初回の膝蓋骨脱臼に対する治療では、まず保存治療が選択されます。この場合、膝関節伸展位で2~3週間固定することが多いと思います。


膝関節を伸展位で固定する理由は、Q angle(通常20度未満で平均14度ぐらい)の影響で、膝関節を屈曲するにつれて膝関節外方への合力がかかるからです。


膝関節の屈曲角度が大きくなるほど、膝蓋骨が脱臼する方向(膝関節の外側)への力が加わります。 このため、膝関節の固定角度は伸展位が推奨されます。


また、膝蓋骨脱臼のために損傷した内側関節包や内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)の修復を促す意味でも、膝関節外側への力があまりかからない膝関節伸展位での初期固定が有効なのです。


これらのことは、TKAの術中において最後のトライアルでパテラのトラッキングを観察すると、膝関節伸展位で安定して、膝関節屈曲位で易脱臼傾向が出現する様子がよく分かります。




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