Medical Tribuneで興味深い記事がありました。
「朝食抜き」の糖尿病患者に指導すべきは「是正」か「継続」か です。




わが国では,朝食を抜く習慣を持っている男女の比率は全体で14.4%(男性),9.8%(女性),20歳代ではそれぞれ30.0%,25.4%とされ(平成25年国民健康・栄養調査),その比率の高さが問題視されている。  


しかし,その一方で,カロリー制限食(本来はエネルギー制限食と呼称すべきだが,習慣的にカロリー制限食と呼称されることが多い)の指導を受けてきた患者の中には,一番簡単にエネルギー摂取を落とすことができる方法として朝食抜きという選択をする人も少なくない。


これまで,そうした患者に対して,「朝食は取るべきです」と是正を勧告すべきなのか,「カロリー制限を頑張っていますね」と継続を応援すべきなのか,私自身分からずにいた。  


このたび,イスラエルのグループから朝食抜きと朝食ありでの血糖変動の相違がきれいに示され,朝食を抜くべきではないとされたのでご紹介したい(Diabetes Care 2015年7月28日オンライン版)


本研究では,HbA1c 7~9%で30~70 歳,BMI 22~35の2型糖尿病患者がベネズエラ・セントラル大学の糖尿病ユニットにおいて募集された。被検者はランダムに2群に分けられた。  


採血の指標としては,血糖,インスリン,Cペプチド,インタクトGLP-1(iGLP-1),遊離脂肪酸(FFA),グルカゴンが採用された


試験の結果,朝食後の血糖,インスリン,Cペプチド,iGLP-1は朝食ありにおいて高値であった。一方,昼食後については,朝食抜きにおいて(同じ食事を食べているにもかかわらず),有意に血糖が高く,有意にインスリン,Cペプチド,iGLP-1が低く,FFAやグルカゴンが高くなっていた。同じ食事を昼食に摂取したとしても,朝食を食べていない場合には,インスリンの分泌が悪く,血糖上昇を抑制し切れないということであった。


以前,朝食摂取比率の高い人ほど体重が増加しにくいというEPIC-Norfolk研究のことをご紹介した(Am J Epidemiol 2008; 167: 188-192)。しかし,その後,朝食摂取量が多いと,1日の総摂取エネルギーが大きくなるという論文が出て(Nutr J 2011; 10: 5),朝食抜きで1日の摂取カロリーが少なくなる方が体に良いかもしれないなどと私自身悩んでいた。  


しかし,本研究は,朝食抜きという食事法は,1日のカロリー摂取としては明確に3分の2になっていても,血糖管理には全く無効であることを示してくれた。毎食後の血糖値の曲線下面積(AUC)0~180分を足し算すると,朝食抜きの方が大きいくらいである。


その理由として,朝食を抜くと,昼食時や夕食時のGLP-1分泌が少なく,インスリン分泌が弱く,グルカゴン分泌が多いというのが,今回の報告の重要な知見であろう。同様の結果は筑波大学のグループからも報告されており(Obes Res Clin Pract 2014; 8: e201-298),朝食抜きという食事法が,少なくとも糖尿病治療としては不適切であることが明確になったと思う。  


一方,朝食抜きのカロリー制限が体重を増やすかどうかは不明であるにしても,少なくとも朝食抜きが(カロリー制限に成功していても)確実な体重減量法とは言えないことは確かであろう(Physiol Behav 2014; 134: 51-54)。  


肥満があっても糖尿病患者に対しては自信を持って「朝食を食べよう」と言うべきである。

                               




私もレコーディングダイエットで減量した経験があるので分かるのですが、朝食を抜くのが総カロリー摂取量を減らすためには最も苦痛が少ない(?)方法です。


しかし、朝食抜きは何となく体に悪いような気がしていました。今回の報告で、何となく体に良くないと感じていた朝食抜きの生活習慣が実際に体に良くないことが証明されました。


カロリー制限が全てではなく、食事の採り方も血糖コントロールや体重減量法に大事であることを知ったことが有益でした。


実は、妻が朝食を食べない習慣があって困っています。どうも朝食抜きがダイエットに有効だと信じているフシがありそうです。


今回の記事を見せて朝食をきっちり採るように説得しようと思います。あまり説得に成功する自信は無いですが・・・


       
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 症状と患者背景にあわせた頻用薬の使い分け―経験とエビデンスに基づく適切な処方





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       類似薬の使い分け―症状に合った薬の選び方とその根拠がわかる