先週のことですが、夜診をしていたところ
その日の午前から誘因なく膝関節部痛が出現したという高校生が初診しました。


膝を見ると、たしかに膝関節水腫を認めました。部活でスポーツをしているとのことだったので、オーバーユースかと思い関節穿刺したところ、白濁した関節液を30cc吸引してしまいました・・・。


???と思って問診を取り直すと、既往にアトピー性皮膚炎があります、更に体温を測ってみると38度台でした。血液生化学検査ではCRPは0.2だったものの、WBC 10500でした。


CRPはWBCと比べて遅行するので、その日の午前発症なら上がっていなくても不思議ではありません。関節液を培養に提出した上で、
セフトリアキソン(ロセフィン) 2gを点滴投与しました。


次の日も外来で診察しましたが38度台の熱発が続き、40ccほどの混濁した血性関節液を吸引しました。臨床的には化膿性膝関節炎なのですが、昨日の関節液の塗抹検査は陰性でした。


発症3日目の午前の血液生化学検査がCRP/WBC 12/10500であり、3日連続で38度台の熱発が続いたので、塗抹検査は陰性だったものの鏡視下関節清掃術の施行を決断しました。


化膿性膝関節炎の場合、手術を行わないデメリットが大き過ぎるという判断です。また、アトピー性皮膚炎の中学生の化膿性外閉鎖筋炎の治療経験があったことも後押しをしてくれました。


ただ、最終的に ”もしこの子が自分の家族であればどうするか?” という観点で考えた結果、”自分の子供なら迷うことなく手術を選択するだろう” と思って決断しました。


週末でしたが、その日の午後に臨時手術を施行しました。術中所見は軽~中等度の滑膜の増生を認めました。量がさほどではなかったので、鏡視下にほぼ全ての滑膜を切除できました。


術後から36度台に解熱して、術後のCRP/WBCは劇的に低下しました。臨床的にはやはり化膿性膝関節炎だったようです。培養の結果はまだ出ていませんが、手術を敢行して良かったです。


今回のようなツボにはまったケースは、まさに医師の醍醐味だと思います。こういう経験をすると、せっかく
アーリーリタイアの決意をしたのに早々に挫けてしまいそうです(笑)。




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