今日の午前は、アルバイト先での外来でした。
1ヵ月前にかなりの殿部~大腿前面痛で初診されました。
腰椎MRIを施行しましたが、軽度の腰椎椎間板ヘルニアをみとめるものの大した所見はありませんでした。大腿前面痛があったので撮影した両股関節の単純X線像も正常範囲内です。
あまりに痛みが強いので、トラムセットを開始しましたが、さほど効果は無いようです。1ヵ月も痛みが続くのもおかしいと思い、もう一度両股関節の単純X線像を撮影しました。
画像を見て驚いたのですが、大腿骨頚部に不顕性骨折を認めるではないですか!大腿骨頚部に仮骨形成をみとめ、大腿骨頭がやや転位しつつあります。
この方は、間質性肺炎に対するステロイド治療の既往があります。間質性肺炎の発症当初はステロイドのパルス療法が施行された可能性が高いです。
こうなると、特発性大腿骨頭壊死症(ION)に併発した大腿骨頚部不顕性骨折である可能性が高いです。もしIONで無ければ臨時手術の適応なので、急遽MRIを撮像しました。
結果は、反対側にも分類上はtype C2の大腿骨頭のtotal necrosisを認めたため、今回の骨折はIONに併発した大腿骨頚部骨折であることが確定しました。
以前にも大腿骨頭のtotal necrosisに併発した大腿骨頚部骨折を経験しましたが、大きく転位しても通常の大腿骨頚部骨折ほどには痛がらない印象を受けました。
そして、今回の方は最後まで”殿部痛”が主な症状であり、股関節部痛はごく軽度認めるのみでした。やはりステロイド服用歴のある方は、股関節疾患も念頭に治療にあたるべきですね・・・。
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股関節学
特発性大腿骨頭壊死症
今日も朝から体中の筋肉が痛いです。
原因は一昨日の人工股関節全置換術(THA)だと思います・・・。
今回の方の原因疾患は、特発性大腿骨頭壊死症(ION)でした。まだかなり若いのですが、type C-2、stage 3bなので大腿骨頭前方回転骨切術(ARO)の適応はありません。
やむを得ずTHA施行となったのですが、若いだけあって骨質が良好でした。「良好」と書けば響きが良いですが、術者サイドから見ると、とにかく骨が固いのです。
私は、通常のOAよりもIONの方が、手術の難易度が高いと思っています。理由はいろいろありますが、寛骨臼側のカップ設置の難しさも要因のひとつだと考えています。
通常のOAと同様に1mm underまでリーミングしてカップのインパクションを行いましたが、全く寛骨臼内に収まる気配がありませんでした。やむを得ずsame sizeのリーミングを行いました。
しかし、same sizeでリーミングしたにも関わらずカップがインパクションできないのです!渾身の力を振り絞って叩打して、何とか寛骨臼内にカップが納まりましたが、冷や汗をかきました。
整復の際にも患者さんの筋肉量が多過ぎて、なかなか整復できませんでした。全身の力を振り絞って何とか整復したものの、術後は疲れてしばらく動けませんでした・・・。
やはり若年者のIONは手技が難しいし、相当体力を消耗します。しかし2日も手術による筋肉痛を引きずるのは、私の体が鈍っている証拠なのかもしれませんね(笑)。
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股関節学
昨日の午前の手術は、人工股関節全置換術(THA)でした。
40歳台の特発性大腿骨頭壊死症(ION)で、両側ともtotal necrosisに近いType C-2でした。
壊死範囲が広すぎて大腿骨頭前方回転骨切術(ARO)の適応はありません。痛みの強い左股関節は stage 3b だったので、若年者ではありますが左THAを施行しました。
特発性大腿骨頭壊死症に対するTHAは、通常の変形性股関節症(OA)のTHAよりもかなり難しいと感じています。今日の方も変形は少ないにも関わらず、脱臼させることが一苦労でした。
おそらく円靭帯が温存されていたため大腿骨頭を脱臼できなかったのだと思いますが、頚部のラフカット → 本番の頚部骨切 というダブルカットをせざるを得ませんでした。
更に寛骨臼の骨質が良過ぎて、1mmアンダーリーミングではカップが全く寛骨臼内にインパクションできませんでした。やむを得ず同サイズリーミングを追加しています。
更に、若年者の特発性大腿骨頭壊死症では可動域が良いため、ちょっとでもインプラントの設置角度が悪いと易脱臼性を併発しやすいというピットフォールがあります。
このようなことから私の中では、OAよりもIONの方が注意が必要で難しいという認識を抱いています。単純X線像だけで判断すると、IONの場合には痛い目に会うかもしれません。
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股関節学
今日の午前の手術は、人工股関節全置換術(THA)でした。60歳台女性の特発性大腿骨頭壊死症のtype C-2で、ほぼ大腿骨頭全てに壊死が発生していました。
1月中旬から痛みが出現して近医を受診した際には、単純X線像で大腿骨頭荷重部の圧潰を認めました。MRIを施行したところ、大腿骨頭のtoral nescrosisでした。
2月初旬に疼痛が増悪したため、MRIの結果説明も兼ねて再度近医を受診すると大腿骨頚部骨折を併発していたため、手術目的で当院に紹介受診されました。
このような症例では人工骨頭置換術を選択する整形外科医が多いと思います。しかし下記のような理由のため、可能であればTHAが望ましいです。
① 若年者の人工骨頭置換術はcentral migrationを併発しやすく長期成績が不安定
② 寛骨臼荷重部軟骨が損傷されていることが多く、thigh painを好発する
以前、M3の掲示板でこのような症例で人工骨頭置換術かTHAかで議論がありました。傍観していたのですが、意見の趨勢が人工骨頭置換術になったので驚いた記憶があります。
股関節外科医的にはTHAしか考えられないのですが、単純X線像での印象よりも手術ははるかに難しいのは事実です。おそらく通常のOAよりもピットフォールが多いです。
今日も寛骨臼の破損が著しく、数秒リーミングしただけで軟骨下骨を穿破しました。また、正常股にそのままカップを設置すると脚延長になってしまうので、少し上方に慎重にリーミングしました。
特発性大腿骨頭壊死症でTHAを施行する際には、可能であれば経験豊富な股関節外科医と一緒に手術を行う方が無難だと思います。
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初学者がTHAの治療体系を俯瞰するにあたり、最もお勧めの書籍です
人工股関節全置換術
今日の午前は人工股関節全置換術(THA)でした。
進行期から末期に入った程度のOAだったので、単純X線像的には問題無さそうな症例でした。
しかし、変形が少ない症例では意外と苦戦することがあります。今日の方は骨質が良好だったので寛骨臼が固かったです。ワンサイズアンダーまでリーミングしてからカップのインプランテーションを行いましたが、良好な初期固定を得ることができませんでした。
仕方なく、同サイズまでリーミングしてカップのインプランテーションを行いました。このあたりは特発性大腿骨頭壊死症(ION)の方と同じような感覚です。術後の単純X線像でもION症例と同様に、寛骨臼荷重部外側とカップの間に少しだけ間隙がありました。
このように正常に近い形態の寛骨臼では、変形性股関節症といえどもIONの方と同様に、寛骨臼の中枢側を少し多めにリーミングするべきだなと思いました。
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初学者がTHAの治療体系を俯瞰するにあたり、最もお勧めの書籍です
人工股関節全置換術
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