昨日の午後は、若年者の大腿骨頚部骨折に対する関節内骨折観血的手術でした。
単純X線像上はGarden stage 1でした。
大腿骨近位部骨折では牽引手術台を使用するケースが多いです。高齢者ではあまり問題にならないですが、牽引手術台の問題点として男性患者に陰部神経麻痺を併発することがあります。
特に若年男性は筋肉量が多いため、かなり牽引を掛けないと整復されないケースが多いです。しかし牽引を掛けすぎると、陰部神経麻痺を併発する可能性が高まるのが難しいところです。
大腿骨頚部骨折は転子部骨折や骨幹部骨折と比べて、牽引力が少なくても整復できる可能性があります。特に若年男性はできるだけ牽引を掛けないで手術を終了させることが重要です。
大腿骨頚部骨折はありふれた外傷なので、いつもと同じ感覚で牽引しがちですが、若年男性では陰部神経麻痺が併発する可能性を常に考えておく必要があります。
若年男性に陰部神経麻痺を併発すると、かなり問題が大きくなります。その方の人生を台無しにしないためにも整形外科医としては充分に注意を払うべきだと思います。
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昨日の午後に大腿骨転子部骨折の方が搬送されました。
単純X線像上は、骨折の転位がかなり大きかったです。
転位の大きい大腿骨転子部骨折では下肢を徒手的に牽引して撮影する、いわゆるtraction viewがお勧めです。骨折で転位していると末梢側が外旋して骨折型を見誤ることがあるからです。
もちろん骨膜が完全に破綻している症例ではあまりきれいな画像にはなりませんが、この場合も骨折部の高度の不安定性があることを術前から把握できます。
初診時のワケの分からない転位の大きな画像のみで判断するのではなく、traction view(牽引撮影)で撮影した正確な大腿骨正面像で手術を施行する方が間違いが少ないと思います。
尚、traction viewは正面像だけで充分です。また、牽引することである程度骨折部が整復されるので、骨折部からの出血の抑制にもある程度有効です。
単純に患側の下肢を引っ張るだけなので、ルーチン撮影に組み込むことをお勧めします。股関節中間位で撮影したきれいな正面像を見ることで、術前のイメージを掴むことができます。
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昨日の午前は大腿骨転子部骨折の観血的骨折手術でした。
ネイルタイプの内固定材料を使用しています。
手術の際に患者さんを牽引手術台に乗せますが、一般的には開排位をとったり、上下段違いにして平行に牽引したりするケースが多いと思います。
私が上司に教えてもらった便利な方法をご紹介します。牽引手術台のアームを1本にして、健側の足を患側アームの上に落として抑制帯で固定する方法です。
メリットは下記のごとくです。
① 健側下肢がイメージの邪魔にならない
② 股関節が拘縮して十分な開排位がとれない症例でも施行可能
注意点は、骨盤後傾が高度な症例では健側下肢が落ちない(股関節が伸展しない)ため施行不能なことです。健側下肢を抑制帯でアームにくくりつけるだけでは固定性に不安に感じるかもしれませんが、術中に下肢が落ちた症例はなく、特にトラブルは経験していません。
術中も快適なので、一度試されてはいかがでしょうか?
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