IT革命は生産性を向上させてきたはずですが、日本に限らず多くの先進国で成長率の鈍化や生産性の低下が議論の対象になっています。


経済協力開発機構(OECD)によれば、2001~07年と07~13年の7年間を比べて、労働生産性の伸びが低下した国は、先進国を中心とする34カ国中で32カ国にも及んでいます。


現時点では、IT革命で節約できた時間が所得の増加につながっているケースは限られているそうです。しかし、本当にIT革命で時間が節約できているのでしょうか?


卑近な事例で検討してみると、IT革命の申し子(?)である電子カルテとオーダリングシステムの普及で、紙カルテと比べてむしろ診療に時間がかかるようになったのではないでしょうか。


私はメインの勤務先以外にもいくつかアルバイトをしています。各病院は全く異なるカルテ形式ですが、最も診療スピードが早いのは紙カルテの病院です。


紙カルテは俯瞰性があり、患者データを立ち上げたり面倒なオーダリングをする必要が無いため、非常に迅速に診療が進んでいきます。


一見、電子カルテではコピペ機能が使えるので診療スピードが上りそうなイメージですが、便利なコピペ機能の足を引っ張るのに充分な雑務が付帯しています。


電子カルテは基本的に全ての処置・検査依頼・処方・病名入力を医師が行うことが前提のシステムになっています。医療クラークを導入すればマシですが、無ければ医師の業務が激増します。


電子カルテが威力を発揮するのは顔見知りの再診患者さんのみで、それさえも紙カルテと大差ありません。各病院とも新患患者さんに関しては忍耐力を試される場になっています(笑)。


ひたすら入力が必要な電子カルテ&オーダリングシステムにかなり慣らされてきましたが、全国的に互換性のある電子カルテで無い限り、導入のメリットは少ないのではないでしょうか。


このように医療の現場においても、IT革命は生産性を向上させたとはとても言えない状況です。少なくとも現状ではITゼネコンの肥やしにしかなっていません。


音声認識機能のある電子カルテやオーダリングシステムが登場すれば話は別ですが、少なくとも現在の「IT革命」は私たち医療従事者の生産性向上には全く役に立っていないと思います。




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