先日、愛知医科大学・准教授の神谷光広先生の腰椎分離症の講演を拝聴しました。腰椎分離症はときどき診察する機会がありますが、数はそれほど多くないと思います。
講演を拝聴して、腰椎分離症の理解が深まったのでまとめてみました。腰椎分離症は、疲労骨折であることが定説になっています。通常、急性期の単純X線像では異常を認めません。
しかし、分離症が完成すると、斜位像で関節突起間部にヨークシャテリアの首輪像と言われる骨連続性の欠損した所見を認めます。
診 断
診断にはMRIのSTIR画像が有用です。矢状断で横突起基部から椎弓根部の高輝度変化を認めれば、腰椎分離症の急性期と診断できます。
治療予測
一方、治療予測はCTで行います。CTでも矢状断で横突起基部から椎弓根部を観察します。骨折線は腹側から始まり、進行するにしたがって背側に至ります。
椎弓腹側皮質の骨吸収像~背側骨皮質の連続性(+)の不全骨折では骨癒合率78%ですが、背側骨皮質の連続性の無い完全分離では骨癒合率は13%だったそうです。
保存治療
骨癒合を目的とした保存治療を行う場合にはMRIでの経過観察と行います。MRIのSTIR像で高輝度変化が低下して、腰椎伸展時通が消失したらコルセット装着下にランニングを開始します。
骨癒合の判定はCTの矢状断で行います。十分な安定性を得たと判断できれば、骨癒合と判断し、コルセットを除去して運動を開始します。
矢状断
昨日の夕方は、アルバイト先で夜診をしていました。
このアルバイト先の医療期間は、病院なのですがMRIがありません。
そして、整形外科の常勤医師も居ないので、入院患者さんの対診も受けなければなりません。地域柄のためか高齢者が多く、昨日も圧迫骨折を疑う方の診察をしました。
単純X線像を確認すると多発性脊椎圧迫骨折がありました。しかし、ほとんどの椎体骨折は陳旧性に見えます。身体所見からは新鮮圧迫骨折がありそうなのですが・・・。
そこで、やむを得ずCTを施行しました。CTを撮影するときは必ず矢状断で再構成をしてもらいます。やはり骨折を判断する上で、矢状断は最も診断価値があると思います。
昨日の方は第4腰椎の新鮮椎体骨折でした。矢状断でみると椎体中央の終板直下がはっきりと陥没しています。しかし、単純X線像を見直しても椎体骨折を全く確認できませんでした。
MRIのある施設ではあっさりMRIを施行すると思いますが、意外とCTの矢状断でも新鮮骨折の有無をよく判断できます。むしろ費用対効果や診断の迅速度ではCTの方が上かもしれせん。
限られた医療資源の中でやむを得ずCTで診断していましたが、脊椎椎体骨折に関しては意外とCTは使えると感じています。ただし大腿骨近位部骨折に関してはイマイチな気はしますが・・・。
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今日の午前は出張先での外来でした。
前胸部を打撲してから1週間経つのに痛いという方が初診されました。
単純X線像では正面・斜位とも明らかな骨折は無さそうでした。しかし、かなり痛くて日常生活で困るということだったので、念のためにCTを施行したところ、矢状断の再構成画像で骨折を認めました。
改めて比較しましたが、やはり単純X線像では骨折は判定できませんでした。CTの画像でははっきりと骨折の転位を認めるのですが、単純X線像では骨折が判然としないのです。
日常診療で胸骨骨折や肋骨骨折を疑っても、CTまで施行することはあまり無いと思います。しかし、よく言われるように身体所見で叩打痛や呼吸時痛があれば、骨折の存在を強く疑うべきなのでしょう。
全例でCTを撮影するのは過剰診療だと思います。しかし交通事故などで診断を確定する必要のある症例では、CTの矢状断での再構成画像は意外に有効な診断ツールだと思いました。
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