整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

石灰沈着性腱炎

腰椎の石灰沈着性腱炎?

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先日、30歳台後半の女性が急激な腰痛と38度台の熱発を訴えて夜間に救急受診しました。
救急外来で採血した血液生化学所見は、WBC 13600/ul, CRP 1.57mg/dlでした。


次の日の午前診で私の外来を受診した際には解熱しており、腰痛も軽減していました。易感染性をきたす既往歴は無いようですが、化膿性椎間板炎を除外診断するためMRIを施行しました。



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上の画像はMRIのSTIRです。明らかな椎間板の高輝度変化は認めませんが、L1~L3椎体前方の軟部組織にびまん性の高輝度領域を認めます。これはいったい何なのでしょうか?



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冠状断で大腰筋は正常ですが、椎体前方の軟部組織にびまん性の高輝度変化を認めます。しかし、膿瘍を形成している所見ではなさそうです。


発症から10時間程度で解熱して腰痛も軽快していることから、化膿性椎間板炎などの感染症ではなさそうな印象です。特に患者さんから重篤感を感じません。


いったい何なのだろう? と考えていると、以前に石灰沈着性頸長筋腱炎の患者さんを診察したことを思い出しました。 もしや、腰椎に何らかの石灰沈着性腱炎を併発したのでは?



単純X線像をもう一度確認しましたが、特に椎体前方に石灰沈着を認めませんでした。しかし、軟部組織が厚いので、単純X線像では確認できない可能性もあります。


診断のためだけに症状が軽快している女性を被爆させるのもどうかと思い、あえてCTは撮影しませんでした。このため石灰沈着性腱炎であったか否かの真偽は不明です。



その後は熱発が再出現することもなく、腰痛は1週間後には完全に無くなりました。総合的に判断すると、腰椎前方の軟部組織に石灰沈着性腱炎を併発した可能性が高いと考えています。





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自治医科大学准教授の星地先生の経験・知識を余すところなく収めたサブテキストです。定番と言われている教科書に記載されている内容は素直に信じてしまいがちですが、実臨床との”ズレ”を感じることがときどきあります。このような臨床家として感じる、「一体何が重要なのか」「何がわかっていないのか」「ツボは何なのか」を自らの経験に基づいて完結に述べられています。








                        

石灰沈着性アキレス腱炎

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先日の外来で30歳台の女性が突然のアキレス腱の痛みで受診されました。
診察すると確かにアキレス腱周囲が腫脹しています。発赤はありませんでした。


単純X線像では下図のように踵骨と距骨の間に、少し分かりにくいですが淡い石灰沈着を認めました。アキレス腱周囲に石灰沈着しているようです。



P1080168 - コピー




診断は、石灰沈着性アキレス腱炎です。石灰沈着性腱板炎は、腱周囲から滑液包内に穿破した石灰成分に対する炎症反応です。


今回はアキレス腱周囲から踵骨後部滑液包内への石灰成分の穿破だと思います。身体所見はアキレス腱周囲炎のようにアキレス腱周囲のびまん性の腫脹を認めました。


しかし、通常のアキレス腱周囲炎と異なり、発症が急激で疼痛の度合いが強いです。本当に全身のいたる所で石灰沈着性腱炎は発症するものです。


ちなみに、私が経験した石灰沈着性腱炎 にさまざまな部位に発症した石灰沈着性腱炎のブログ記事をまとめているのでご参考にして下さい。



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手根管内の石灰沈着性腱炎

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先日、右母指から中指の突然発症した激烈な疼痛としびれを主訴にした60歳台の男性が初診されました。診察すると明らかに正中神経領域の神経刺激症状です。



P1080137 - コピー



単純X線像では上記のように手根管内に小さな石灰化を認めました。発症機序と画像所見から石灰沈着性腱炎の一種だと診断しました。私は以前にも似たような症例を経験しています。


リリカとロキソニンを投与してしばらく経過観察していると発症後1ヶ月でかなり軽快しました。しかし、発症後2ヵ月で再度単純X線像を撮影したところ、石灰化はあまり変化ありませんでした。


おそらく沈着した石灰自体のボリュームによる正中神経の圧迫ではなく、周囲の炎症によって正中神経周囲の軟部組織が腫大して正中神経を圧迫していたのでしょう。


症状が激烈な場合には手術を施行して手根管の除圧を図るかどうかを悩みます。基本的には安静にしていると炎症は軽快するので、まずは保存療法を選択するのが妥当かなと思います。



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私が経験した石灰沈着性腱炎

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石灰沈着性腱炎は全身のいたるところに発症します。
石灰沈着性腱板炎は、腱周囲から滑液包内に穿破した石灰成分に対する炎症反応です。


肩関節の石灰沈着性腱板炎や膝関節や手関節の偽痛風はメジャーなのですが、その他の部位にも発症するので自験例をまとめてみました。



     石灰沈着性頚長筋腱炎

     石灰沈着性中殿筋腱炎
 
     石灰沈着性大転子滑液包炎

     石灰沈着性尺側手根屈筋腱炎(上腕骨内上顆)

     石灰沈着性尺側手根屈筋腱炎(手関節豆状骨)

     石灰沈着性長母趾伸筋腱炎

     手根管内の石灰沈着性腱炎
     
     石灰沈着性アキレス腱炎
    

この3年だけでも、いろいろな部位の石灰沈着性腱炎に遭遇したものです。あまり話題に上りませんが、きっと他の整形外科の先生方も経験されているのでしょうね。




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石灰沈着性中殿筋腱炎のその後

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先日の石灰沈着性中殿筋腱炎(?)の方ですが、その後安静入院を続けたところ3日ほどで痛みが完全に消失しました。こちらが拍子抜けするぐらいご本人もケロッとしています。


血液生化学データでCRPが完全に陰性化するのに2週間かかりましたが、早い段階からWBCが正常範囲内に戻ったので、無治療ではあるものの安心して診ることができました。


やはり、ご本人の重篤感が無いことは大事なことだと思いました。症状が完全になくなったので約5日で退院して、発症後2週間後に両股関節の単純X線像を撮影しました。


単純X線像側面像では、初診時のCTで認めた大転子部の高位の大腿骨前面の石灰化は全く分かりませんでした。吸収されて消失したのか不明ですが、ひとまず治療は終了としました。


今回の治療に際して文献を渉猟したところ、石灰沈着性中殿筋腱炎は比較的たくさん報告されていることを知りました。どうやら、それほど珍しい疾患でもなさそうです。

 
さすがに一例報告しているだけあった、エコーガイド下にステロイド注射を施行している報告を散見しましたが、今回の経験からステロイド注射は必須ではないと考えました。


もちろん、石灰沈着性腱板炎のようにステロイド注射が著効する例もあるでしょうが、解剖学的に深部に位置するので無理してステロイド注射をする必要性は低いと思います。


それにしても、何事もなく症状が軽快して良かったです。一旦股関節周囲に感染を発症すると治療が厄介なことが多いですから・・・



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