Medical Tribuneで興味深い記事がありました。
「骨髄炎が疑われる糖尿病にはMRIが有用」です。
北播磨総合医療センター形成外科の藤井美樹氏は,骨髄炎診断にはMRIが有用との知見を,第44回日本創傷治癒学会で報告した。
神経障害と感染症が主病因の場合,局在まで予測可能なケースも多いという。 糖尿病性足潰瘍にとって骨髄炎は,下肢切断率や抗生剤の投与期間に関わる重要な因子となる。
また,外科的治療,保存的治療のいずれで対処するにしても,壊死や感染組織などの範囲は大切な情報となるため,骨髄炎は有無だけでなく,局在の把握が求められている。
現状では骨髄炎が疑われる糖尿病患者に対しては単純X線を行い,確認できないときにMRIを撮影することが推奨されている。
しかし、藤井氏は「X線は感染により破壊された骨を見ることしかできず,どこまで感染しているかを見ることができない」と指摘した。
一方,MRIではT1強調像が高信号/脂肪抑制T2強調像が低信号ならば正常骨髄,
反対にT1強調像が低信号/脂肪抑制T2強調像が高信号ならば骨髄炎,
両画像がはっきりしない部分を骨髄浮腫と診断することができる。
同氏らは,術前のMRI診断と骨の病理標本の比較が可能だった糖尿病性足潰瘍28例(39趾,149骨)を神戸分類に基づき4つの病態に分類し(タイプⅠ神経障害性潰瘍,同Ⅱ重症下肢虚血,同Ⅲ感染症,同Ⅳ虚血+感染合併例),病態ごとのMRIの有用性を見た。
その結果,虚血が関与しないタイプⅠとⅢは軟部組織感染症を含めて全55骨で術前MRIと病理所見が局在まで一致していた一方で,虚血メインのタイプⅡの症例では血行再建前後のMRIともに全例の診断ができなかった。
同氏は「虚血のみのタイプⅡはMRI撮影の意味は少ないが,タイプⅠおよびⅢは術前のMRIで骨髄炎の局在まで診断が可能であり,診断結果に基づいて軟部組織感染を制御しながら治療を行うことができる」と述べた。
整形外科医にとっては何となく常識的な気がするのですが、改めて指摘されると確かに骨髄炎症例の感染範囲の把握にはMRIが有効です。
ただし、足部の糖尿病性壊疽に関しては局所を掻破するというよりも、現実的には「どの高位で切断するか」が問題となってきます。
そして、解剖学的な特徴から、切断高位は ① 足趾切断 ② 前側部切断 ③ 下腿切断 ④ 大腿切断 のいずれかになると思います。
したがって足部の壊疽でMRIを撮像する臨床的意味はあまり高くないと思われます。しかし、形成外科では血行再建も治療の選択枝となるため、このような発想が出てきたのだと思います。
私は、足部糖尿病性壊疽でMRIを施行するつもりは無いですが、脛骨骨髄炎などでは掻破範囲の把握にMRIは有用だと考えています。過剰医療にならない範囲でMRIを利用しようと思います。
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